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Re: もう一度、青空を。 ( No.11 )
日時: 2016/01/30 00:04
名前: あき朱音 (ID: 4xvA3DEa)
参照: 恋の想い出。

好きだと気付いたのは、いつだっただろうか。



それは中学生の頃の、寒い冬だった気がする。



お互い、何年の頃だったかなんて、覚えていない。

大事なのは今であって、昔のことなんて関係のないことだ。



でも、今日は特別。

彼の誕生日には、想い出を振り返ると。
そういうことに、決めているからだ。









冬、私は友達を待っていた。
どんな理由だっただろう……彼女が所属する何かの仕事、だったかな。

根暗で無表情、感情が分からない___そう言われていた私には、片手で数えられる程しか、友達は居なかった。

マフラーもなく、カイロもなく、薄いブレザーの制服のまま……ただただ、待っていた駅前。


指は寒さで悴み、送ったSNSにも既読は付かない。
もう帰ってしまおうかとも考えたが、数少ない友達を寒さで手放すのは、流石の私も気が引けた。



そのとき、向こうから人影が。
その影は段々と私に近付いてきて、正体が見えた。



整った顔に、夕日に映えるような淡い綺麗な瞳。
決して『クラス一のイケメン』とは言えないような男の人。

その人は私の学校の制服を着ていて、先輩だろうか、と気付く。


「……寒くない?」


彼は、それだけ聞いた。

優しい、心が暖かくなるような声で、それだけ。


その瞬間、私はすっかり恋に落ちてしまっていたのだ。




これまでの人生で、ここまで『好き』と感じた人間は、先輩が初めてだった。




「だ、大丈夫……です」


話すことに慣れていない私は、片言で言葉を紡ぐ。


「あはは。声、震えちゃってるよ。
 寒いんだよね? ちょっと待ってて」


男ものだから恥ずかしいかもしれないけどと、マフラーを掛けてくれる彼。

マフラーから伝わる彼の体温が、私の心までもを熱っぽく染める。



去っていく彼は、優し気な背中をしていた。
寒い筈なのに、そんな素振りを見せない優しさに胸を打たれたのだった。



恋は憧れ。



そんな言葉が、今では身に染みて分かる様。
その優しさと笑顔に憧れた私の愛。それは異様な程に歪んでいると、なんとなく気付いていた。


私は、彼を愛していた。それは、今も昔も変わらない。



ずっと好きだった、そして知りたくなった。

夜空先輩の全てを、知り尽くしたいと思った。






だからこれが、私の愛。







これが、私の恋の想い出。