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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: もう一度、青空を。 ( No.14 )
- 日時: 2016/02/03 23:16
- 名前: あき朱音 (ID: 4xvA3DEa)
- 参照: 恋の話でも。
着いたのは、小さな喫茶店。
生徒にとっての憩いの場であるそこは、どんよりとした湿気のせいだろうか、人がいつもより少なく見える。
彼女は話しやすくなったのか、肩の力を抜いた……ようだった。
私はアップルティーに、砂糖を多めで。
ユウちゃんは、苦めのコーヒーを注文したみたいだ。
その苦そうなコーヒーは、幼そうな外見には見合っていない。何だか精神年齢で負けたような気がして、そしてそんなことを考えたのが馬鹿らしく思えて、アップルティーを一口飲み込んだ。
じんわりと口に広がる甘い風味が、私の緊張を解していくようだ。
「……あの」
そんなに怖がらないでくれますか、と。
淡々とした声が向かいから聞こえて、私はびくりと肩を揺らす。
「ご、ごめんね、えっと……お話って、なにかな」
焦った私は、そんなわざとらしいことを聞くしかない。
彼女は小さく溜め息を吐くと、飲んでいたコーヒーのカップを置いた。
「……そうですね、軽く恋の話でもしましょう」
私がしたかったのは本来そういうこと。
そんな風に言ってのけた彼女は、退屈そうに濁った目を向けてくる。
その目はぞっとするほどに感情がない。
恋の話をする前というより、亡くなった人の話でもするかのような目。
それがユウちゃんの通常運転だとは分かっているが、それでもぞっとするような目つき。
慌てて目を逸らし、カップの中をかきまぜた。
「……そうだね。
ユウちゃんの好きな人って、やっぱりソラくん?」
少し、少しだけ茶化すように。
私はそう言って笑う。
彼女はその言葉を聞くと、飲み込むように頷いてから、
「……好きですよ。貴方の気持ちより、ずっと」
そんな風に、挑発的に言ってのけたのだった。
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