コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: もう一度、青空を。 ( No.16 )
日時: 2016/02/26 22:31
名前: あき朱音 (ID: 4xvA3DEa)
参照: 喫茶店事変。

もうすぐテストも近いこの時期に、僕達は何故か喫茶店にいた。
長時間滞在の予定で、開きすらしないだろう問題集を持ち込んで。


ホシはやっぱり金持ちとかいうやつで、高めのフラペチーノ? とかいうやつを頼むんだと意気込んでいた。

今月の新作の、桜あんみつフラペチーノ。
抹茶添え……が巷のトレンドだとか、なんとか。


正直そんな洒落たことに興味のない僕は、呑気に安いカフェラテでも買って行こうと考えていた。
吸うのが疲れるお洒落な飲み物よりも、手軽に気軽に飲めるもののほうが好き。


そんなことをぼんやり考えていると、次第に雲行きが怪しくなってくる。
慣れたように「桜あんみつフラペチーノの抹茶、トールで」と頼んでいるホシの後で、慌ててカフェラテを注文した。



「ホシってお洒落だよなぁ」
「そう? でもさぁ、こういうところなんだから美味しいもの飲んでいきたいじゃん」



その気持ちも幾分かは分かったので、深くは聞かずに席に座る。
比較的広い店の端っこに座れば、殆どの席は見れた。


「ね、ねぇ夜空……あれって」

ホシが驚いたように声を掛けてきたので、僕は比較的ゆっくりと返答した。



だが、そこにいた二人は。
あろうことか、といった二人で。

一瞬、心臓が止まる。


「……ユウちゃんに……ソラ?」


少し見ただけで、尋常ではない会話に見える。
ユウちゃんは抉るような鋭い瞳で、ソラを見ていて。
ソラは怯えたように、それでも揺らがない目で見つめ返していて。


二人の会話が穏やかではないことは、誰の目にも分かる。

それに二人は、元々よく話すような仲ではない。
寧ろ、お互いを毛嫌いしてきたようにも感じられた。



がちゃん、と。
カップを荒々しく置いたユウちゃんは、ソラに何かを語りかけている。
跳ねた飛沫が、ソラの制服をぴしゃりと汚す。

会話の内容こそ聞き取れないが、二人は明らかに深刻な顔。


「夜空……?」


呆然とその光景を見つめるだけの僕に、ホシが心配そうに声を掛ける。


「……ねぇ、あれ___只事に見える?」


僕の呆けた質問に、ホシは全然、と首を振るのだった。





そして、僕の視界の目の前を。



見慣れた、さらさらの髪が、風のように横切っていった。