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Re: もう一度、青空を。 ( No.2 )
日時: 2016/01/01 18:31
名前: あき朱音 (ID: 4xvA3DEa)
参照: おたんじょうび。

「お誕生日おめでとっ、よーぞらっ!」


その言葉と共に視界に映ったのは、にぱっと笑ったホシと『Happybirthday』と歪な文字で書かれたノート。

「……え」

一瞬ぽかんとした。
自分の誕生日なんて…………覚えてなかったな。

「どうどう!? 嬉しいよね!?」

にこにこ、と笑うホシ。
その笑みに悪意なんてなくて、純粋に祝ってくれているのが分かる。

…こいつはもともと、そういう奴だしな。

「……ありがと、ホシ」
「どいたまどいたま! 来世まで感謝してね!」

えっへん! と胸を張り、満足気に目を細める。
こんなの柄じゃないけど、ホシは可愛いと思う。
そこらのキャバキャバした女子よりは幾分か可愛い。

そんなこと言ったら調子に乗るから、絶対言ってやらないけど。


「……あれ?」

そこで、違和感に気付く。
このクラスを覗き込める廊下の奥、一回り小さな人影を見つけたのだ。
それは一年生の証である赤いリボンを付けていて、あぁ、と納得して立ち上がる。

「どーしたの?」

気軽に声を掛けると、その影はびくんと肩を揺らして姿を現す。
小柄な体に、陶器のように白い肌。ふわふわの栗色の髪の毛。
まさに『人形』という言葉が似合いそうなその少女は、おどおどと目を泳がせていた。

「っ、あ、あのっ………」
「ユウちゃん? 誰かに用事なら呼ぶよ?」

彼女は上目遣いに僕を見て、こくりと一つ息を呑んだ。
何か、あったのだろうか。
いつでも冷静な彼女がこんなに慌てるなんて……。

そんなことを思いながら言葉を待っていると、ユウちゃんはいつもの無表情に戻ったみたいだった。

「……私、先輩に言いたいことと渡したいものがあるのです」
「え、僕に?」

こくん。
彼女はゆっくり、マイペースに頷いて、僕の瞳を真っ直ぐ捉える。
そして、淡く溶けてしまいそうな薄い微笑みを湛えて口を開いた。



「お誕生日おめでとうございます、真昼夜空先輩」