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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: もう一度、青空を。 ( No.5 )
- 日時: 2016/01/21 23:28
- 名前: あき朱音 (ID: 4xvA3DEa)
- 参照: おめでとう。
帰り道。
私の心臓は何だか高鳴っていて、気を抜くとその音がどきんどきんと聞こえてくる。
大丈夫、プレゼントを渡すだけなんだから……。
「そ、ソラくん! 待たせちゃってごめんね」
「いいよ、大丈夫」
いつも通り。
一日のノルマである授業が終わった後は、彼は無口になってしまう。
その静けさがいつもは心地よかったけど、今日はそれが、私を緊張させる一因となっていた。
深呼吸をすると、微かに冬の香りの残る春の空気を感じた。
それによって多少落ち着いた私は、彼をちらりと見た。
彼は道沿いの白線を踏んで遊んでいて、何だか可愛かった。
「ねぇ、ソラくん」
「んー……?」
振り向いた髪から、桜みたいな匂いがして、思わず目を細めた。
深呼吸をして、顔を見る。
目を慌てて逸らすソラくんは、子供みたいに澄んだ瞳。
「お誕生日おめでとう」
私はそれだけ言うと、その両手に袋を持たせた。
待って、という彼に「帰ったら見てね! もう帰らなきゃ!」とだけ告げる。
恥ずかしくてぶっきらぼうになっちゃったけど、ちゃんと伝わったかな。
ソラくん、喜んでくれるといいな。
私はそんな思いを馳せて、家への帰路を歩いた。
途中でくらりと立ちくらみがしたのは、きっと恥ずかしさのせいだろう。
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