コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: もう一度、青空を。 ( No.7 )
- 日時: 2016/01/23 19:49
- 名前: あき朱音 (ID: 4xvA3DEa)
- 参照: 恋しちゃった。
そのあと、コロちゃんはそそくさと帰っていった。
今から塾なんだ、とだけ告げて。
それは明らかに塾ではないようなよそよそしい感じだったけれど、それをしつこく聞くのも何だと思い、それを信じた体で話した。
きっと彼女には、彼女なりの理由もあるだろう。
コロちゃんは変な嘘は吐かないひとだと、僕は知っている。
彼女の足は軽やかなスキップをしていたし、不穏な理由でもない筈。
……かなり長く話していたようで、段々と日が暮れ始めた。
辺りの家がぽつぽつと灯りをつけ始め、慌てて足を運ぶ。
何だか不安になる淡い青色が、空を焦がす。
それが段々色濃くなっていき、ホシからのLIMEに、軽く目を通した。
『ねぇよぞら!! 聞いと!!』
余程焦っていたのか、なんなのか。
聞いと、は多分聞いての間違い……だと思いたい。まぁ、彼ならやりかねないから。
『なんだよー』
適当に返すと、すぐに既読がついた。
……ずっと僕の個人チャットを開いて、待っていたのだろうか?
それなら、一時間も間を空けてしまったのは、彼にとっては非常に困った事態だっただろう。
心の中で謝り、目線を移す。
『聞いて! やばい!』
『落ち着いて、なにがあったの?』
それだけ打つと、彼からの返信が来るのを待った。
『恋しちゃった』
はぁ? と思わず声が漏れる。
誰もいない道だと独り言のようになってしまうわけで、慌てて口を抑えた。
だがその恥ずかしそうなやたらと乙女チックな内容からは、悪意は感じない。
彼に悪気があるのならそこまで、羽交い絞めにでもしてやるけれど。純粋な恋の相談を、無碍にする必要はないな。
そう思った僕は、こじんまりとした公園へ入った。
春の草木が、出迎えてくれるように揺れた。
あぁ、このにおいは、ソラのに似てる。
優しい香りに導かれて、ベンチへと腰を降ろす。
空もいよいよ闇に染まり、月も出てきた。
その月はさっき会ったコロちゃんみたいに、きらきらと輝いている。
『誰に?』
『……それは言えない……』
これで言ってしまう人間というのは、確実に騙されやすい体質だろう。
その点で言えば、ホシの選択は一理ある。
ここから、長い長い、ホシの恋話が始まったのだった。