コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 君への執着 ( No.2 )
日時: 2015/12/24 17:02
名前: 音宮 ◆93nWkRSozk (ID: Jk.jaDzR)

【お箱入り娘は勇者である】

『す、すいませんっ。お、俺はそんなつもりじゃなくて……ひっ!』

誰かに登校中ぶつかられて、俺の顔を見た瞬間、こうだ。
俺は、ただ目つきが悪くて少し頭の悪いだけなのに、やくざ扱い。
もうこれは小学校のころからで否、生まれたときからかもしれない。
誰かにやくざや不良に見間違えられることなど、日常茶飯事だ。

「い、いや、俺そんなんじゃないからっ!」

ちょっとずつ後ろ歩きで下がっていく男子中学生を止めようとしたら余計に怖がられ、そしてものすごいスピードで逃げられる。

「はぁ……」

いつものこと、いつものことだと思っていても少し辛い。

Re: 君への執着 ( No.3 )
日時: 2015/12/25 13:35
名前: 音宮 ◆93nWkRSozk (ID: Jk.jaDzR)


『あ、いた。巷で有名な登也さんじゃないかよ』

ふふっと笑いながら俺に近づいてくるチンピラさん。
もちろんチンピラさんは独りで俺に話しかけたんじゃなくて、ちゃんとお連れ様を三人引き連れて俺に近づいてきた。

(寄りにもよってこんなときに)

そう俺が思ったものも無理はない。だって今日はだいじな始業式でもあるのだ。この人らと関わってたら絶対に間に合わないし、俺では勝ち目がない。
不良などとして扱われているが、本当は喧嘩などものすごく弱いのだ。

「すまない、俺はそんなんじゃないんだ」

ただ、いつも持っている目つぶしスプレーを相手に噴射し、苦しんでいるところを蹴ってその間に逃げるというパターンを繰り返しているだけ。
そう、俺は卑怯なのだ。

『何言ってんだ、とーやさんよ。先週でここらの不良を百人斬りじゃねぇか』

そういいながら俺の胸元を掴み、店の壁に押し付けて、持ち上げられる。
もうごまかしもできない、もう終わりだ——と思ったその時、誰かがその不良を蹴り上げた。


「お前さん、調子乗ってるね。こんな大通りで焼きを入れるなんて」

ハイスキーな声と共に小柄な体がその地面に着地した。
しかし、大きな帽子で顔の半分は見えないが、男だということはわかる。

『お、お前はっ!……孤高の戦人!!』

おびえるような瞳で小柄な男を指し、叫ぶと背中を向けながら去ろうとした瞬間、少年は逃がすまいとそれぞれに大きな打撃を与えた。
そしてひとくくりに縄で縛ると、近くのお店の店員に警察へと送ってもらう。

その一連を見ていた俺は、唖然としていた。

「大丈夫かい?」

彼が近づいて俺に触る。
なんて小さい体なんだ、こんな小さい人に俺は。
——守られてしまったのかと気付き、恥ずかしさがこみあげてくる。

「ああ、大丈夫。君こそ大丈夫か?」

「もちろん、大丈夫さ。僕はこの通り強いからね」


自慢気に胸をそらす彼の姿を見ていて少し笑ってしまった。
きっとこの人はいい人なんだなと思いながらポンポンと頭を撫でると、
登校していたことを思い出し、学校に向かうため、駆けだし始める。
もちろん、彼に満面の笑みとお礼を伝えてから。

「ありがとうな、小さな勇者さん」

俺は、彼が赤くなりながら小さな声でどういたしましてと言っていたことを知らずに学校へと向かっていたのだった——