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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ハオのウィザード ( No.1 )
- 日時: 2015/12/26 09:55
- 名前: 明鈴 ◆kFPwraB4aw (ID: ctVO2o7q)
【序章:三人の話】
そこは、静かな空間だった。窓もドアもない「無」の空間。
そこに佇む一人の少女がいた。何もない空間をただ一心に見つめていた。
その少女は果たして何を考えているのか。否、何も考えていないのかもしれない。
端正な顔立ち、小さな鼻、潤う唇。しかしそれらに似合わず髪型は無造作に跳ねたショートボブであった。
赤みがかったその髪は真っ白な空間によく映えた。
少女は前方を睨み据えたまま、ぼそりとつぶやいた。
それは、愛くるしい外見からは全く想像がつかないほど低く掠れた声であった。
「やっと訪れたこのチャンス……必ずものにしてやる」
少女の口から放たれた言葉は、そのまま虚空へと消え去った。
▼
一方、そこはやけに騒がしい空間であった。大勢の人が押し合いへし合い——少年もまた、そのうちの一人であった。
短髪をかきあげ、その物々しさにふう、と息をつく。そして窓の外を眺めた。
右から左へと建物が流れるように過ぎてゆく。
「次は〜、 星見台〜、星見台〜。右側の扉が開きます、ご注意……」
聞き取りづらいアナウンスを微かに耳にし、少年は寝ぼけ眼をごしごしとこすった。
そして、
少年は「電車」から降りた。
▼
同時刻、別の車両でも一人の少年が学生鞄を手に軽い溜め息をついていた。
もう一方の手で吊り革を掴み、電車の『がたたん、ごととん』という音に耳を傾けていた。
「次は〜、 星見台〜、星見台〜。右側の扉が開きます、ご注意……」
車内アナウンスが流れ、電車は徐々にスピードを落としてゆく。
そして三人は出会うこととなる。
舞台は閑静な住宅街、
『星見台』————。
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