コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: *誇り高き竜騎士達へ* ( No.2 )
- 日時: 2015/12/27 04:02
- 名前: 梅飴 (ID: I.inwBVK)
それからアーサーは筋トレや体力をつけるのに、汗を流した。
もちろん、水汲みなど手伝いはサボらなかったが、遊ぶ時間がめっきり減った。
毎晩、母の膝の上でウトウトしながら、パチパチ燃える薪と炎で赤くなる卵を眺めて寝た。
それが一番至福の時だった。
汗を流して二週間。
いっこうに卵は割れる気配も見せなかった。
「おかしいわね〜」とつぶやく母を横に、アーサーは心配そうに卵を見つめていた。
「おーい!アーサー、お前ん家にドラゴンの卵があるんだって?どこから買ったんだよ?ドラゴンなんて高かっただろー?倍出してやるから俺に譲れよ。お前にはもったいねえ」
村のいじめっ子達がアーサーを取り囲んだ。
言っていないはずなのに、知っているのは家を覗いたのだろう。
「なー、親切に貧乏人のお前たちにお金出すって言ってんだからはやくしろよー。あ、もうしかして、もっと出せって?これだから貧乏人はやだよねー。お金お金。お前の母さん、どうやって働いてんの?まーさーかー、体売ってるとか?」
ゲラゲラ笑ういじめっ子達は、次の瞬間に笑みが拭い去られた。
ドカッ
「…ア、アーサーが殴った…?」
初めてアーサーが人を殴るのを見たいじめっ子たちは動揺を隠せなかった。
「お母さんを馬鹿にすることは絶対許さない!」
右手をワナワナさせながら、アーサーは泣き目になって叫んだ。
「いってえ!何すんだよ、この野郎!」
パンチをくらわせたいじめっ子だったが、一番身長が低いアーサーがビクともしない。
最近の筋トレがきいているようだ。
「覚えてろよ!母さんに言ってやる!」
捨て台詞を吐いて言ってしまったいじめっ子たちは、あっという間に見えなくなった。
一人呆然と立つアーサーは、右手を見つめていた。
初めて人を殴った、その右手は暴力をふるってしまったものの、どこかスカッとしていた。
沈むオレンジ色の夕日を見つめて、アーサーは家に走って帰った。