コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 〜Dolce〜 Tarantella【挿絵付き】 ( No.12 )
- 日時: 2016/01/05 16:53
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: hYCoik1d)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode
「Short cake(イチゴのショートケーキ)」〝さっちん〟
多分、私が一番最初に食べたケーキはショートケーキじゃないかなって思います。
誕生日に買って貰ったあの白くてイチゴが綺麗にバランス良く乗っててその美味しさに感動した事は忘れられない。
他にも沢山ケーキは有るけど、やっぱりケーキと言えばショートケーキだと思う。此処の店での一番人気も〝イチゴのショートケーキ〟だし。
ショートケーキの〝ショート〟は、短いという意味では無く……、実は
〝脆い〟とか〝砕ける〟という意味らしい。
どんどん仕事をしていくうちに身に付けた知識で、たまに友達に自慢すると褒めて貰えるので他にも沢山ケーキについての豆知識を身に付けたいと思って居る。
脆いとか砕けると聞くと、ボロボロ崩れるイメージしか無いけどショートケーキだったら繊細さとかを感じる……。
繊細なケーキは今日も沢山売れて、余る事は無い。
「スミマセン──……?」
ケーキの事を考えていたあまりボーっとし過ぎてしまい、我に返る。
肩を叩いてくれたのは小鈴ちゃん……〝にこちゃん〟だった。
「御免ね〜」
「大丈夫ですかー?」
のんびりと返事をする私ににこちゃんは、やれやれと言った様子でそう言って自分の仕事に戻って行った。
改めて御客さんの方へ向き直す。
「予約していた、蔵田ですけど──……」
「蔵田様!! ケーキが出来上がりましたよ〜!」
そう言って私が取りに行くのは、誕生日ケーキで私が生まれて初めて最初に食べたケーキと似て居た。
「本日は御誕生日おめでとう御座います。」
そう言って笑顔で渡す。
今日が誕生日……か。
記念日に食べるケーキって美味しいんだよなぁ。
ふとそんな思いが現れる。
「有難う御座いました。御次の御客様どうぞ!!?」
今日はどんな人が、どんな時でケーキを買いに来るんだろう。
──……Nice anniversary────
【続く】
byてるてる522
- Re: 〜Dolce〜 Tarantella【挿絵付き】 ( No.13 )
- 日時: 2016/01/06 13:54
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: hYCoik1d)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode
〝さえの〟
一週間は7日間で、私が学校へ行く日は5日間。残りは土日になるのは当たり前の事。
残りが土日になるのと同じ位当たり前の事は、土日の2日間は私も御姉ちゃんが働く〝Tarantella〟で手伝いをするという事だった。
特別楽しみという訳では無いけれど、やっぱり楽しい。
笑顔になってるなぁって感じる。
「御免ね〜」
御姉ちゃんの声がしてそっちに視線を向けると、にこさんが……
「大丈夫ですかー?」
と肩を竦めて居た。
私の御姉ちゃんは普通にしてればまぁまぁまともだし……むしろモテる位なのに異様なスイーツへの愛で台無しになってる。
こんなにもマイペースでケーキLove!!!!の御姉ちゃんに皆さん良く付いて行くなぁって思ったり──……。
「あの、すいませーん──?」
ショーケース前であれやこれやと迷って居た人がやっと決めたらしい。
「ハイ。ご注文をどうぞ……」
軽く笑って対応する。あまり笑うのは得意じゃないけど、意識し過ぎると気持ち悪くなるって御姉ちゃんに言われた。
「今日は、イチゴのショートケーキ下さい!!」
男の人がそう言って、注文数の分を取る。
「いつも此処のケーキ食べてるのよ……また来るわね〜?」
おっとりとした口調。多分男の人の御母さんか誰かだろうか。
「有難う御座います!!これからも御願いします。」
「貴方、店長さんの方と顔が似てるわね。」
「ハイ。店長は実姉です。」
「あらまぁ……姉妹揃って良いわね!!」
他愛無い会話の中にもこの人のちょっとした観察力が分かる気がした。
たまに、「似てるね」とか言われる事は有る。
自分ではそんなに似てるとは思えないけど……。
性格も真逆のような物だし……。
でも嬉しい。
「有難う御座いました〜!!」
少しずつ自信を付けて、学校でも過ごせると良いな。
──……With confidence──
【続く】
byてるてる522
- Re: 〜Dolce〜 Tarantella【挿絵付き】 ( No.14 )
- 日時: 2016/01/07 19:18
- 名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o (ID: VNP3BWQA)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode
〝にこちゃん〟
誰だろう、私にこんなにも合わないあだ名を付けたのは……そうか、さっちんか。
久し振りに考えて思い出して、溜め息が出た。
「御免ね〜」
例によってさっちんは案の定またスイーツの事でも考えて居たのかボーっとしていた。
御客さんも戸惑って居たので取り敢えず肩を叩いたら返って来た返事だ。
「大丈夫ですかー?」
不安だけどきっと大丈夫だろう。
私の気持ちはそう思って居た。
思い通り、暫くしてからさっちんの方を横目で見ると笑顔でテキパキと御客さんの相手をしていてちょっとばかり感動した。
「いやぁ良かったね〜!! にこちゃん」
ニコッと笑う〝あゆした〟こと下野歩という男はいつもと同じでヘラヘラしていて自然に殴りたくなる。
「貴方が言うと凄く腹が立ちます」
「俺とにこちゃんの相性は最悪みたいだね。悲しいなぁ──」
此れ以上話すと苛々が募って、取り返しの付かない事になりそうだったので私はその場を即座に離れた。
その後、あゆしたと〝みなかわ〟こと潮川湊さんと何か話して居て気になったけれど軽く息を吐いて仕事に戻った。
ケーキに白いフワフワのクリームを塗ってから苺を乗せると見慣れた、Tarantellaのショートケーキになる。
ケーキ屋で売って居るケーキの作り方を知っているのはちょっとばかりの自慢でも有り……──
私も御客さんとして来た事の有る此処で働ける事が何よりも嬉しく感じている。
──……l work at the usual place───
昔からと考えると私にはこういう感覚なのだ。
【続く】
byてるてる522