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Re: Hello,world! ( No.10 )
日時: 2016/01/24 20:55
名前: 海の幸 (ID: EChsNpC2)

「機嫌直せよ、夜明」
「信じられないんだけど。本人の承諾もなしに勝手に決めやがって」
「でもよ、前向きに考えればこれに勝てばもうあっちから関りを持つことはないんだぞ?いい条件だとは思わないか」
「それは貴様の都合だ」

 ブッスーとしながら豪快に玄関の前にある階段に座る夜明。キースから大方の事情を聴いた夜明は不機嫌ルートまっしぐらだった。
 そして、彼女をこんな不快にした犯人、ワッツは宥める様に猫撫で声で手を合わせる。そんな彼にますます夜明の頭は沸騰していく。
——こいつはいつもそうだ。強かで、皮肉屋で。
 4年間の付き合いを思い出した夜明はケッと唾を吐き捨てる。

「学生は暇じゃないんだよ!」
「学生っていうほど勉強していないくせにか」
「おっと私の敵は目前にいるようだな」
「やめろ!!」

 怒りに任せて夜明はバットでワッツの顔面めがけて振りかざそうとしたが、すかさずキースに止められる。

「止めるなキース!こいつにジークリンデ財閥を継がせたら衰退の一途を辿るだけだぞ」
「お前の気持ちは今回だけわかる!だが、これはお前個人の問題じゃないんだ」
「おっと、ジークリンデ財閥ってのはここかい?」

 抵抗する夜明を仲裁するかのように低い男の声が聞こえた。
 その声の方向に羽交い絞めした夜明ごと体を方向転換する。
 ワッツは射貫くようなまなざしで長身で屈強な男を見る。

「……ああ。そうだが。まさか、お前アイリス様の言っていた戦士か?」
「いかにも。本日俺はアイリスお嬢様に雇われた傭兵のマクベス。ここには姿を現しちゃあいないが、お嬢様配下の僕たちも潜んでる」
「……そういや、もう1時だな」

 ふと、思い出したかのようにワッツは腕時計を見る。時刻はちょうど午後1時だった。
 マクベスをじっと見据えながら夜明は怒りを鎮めたのか猫のようにするりとキースの拘束を免れる。

「話は聞いてるぜお嬢ちゃん。お前が俺の対戦相手だって?そんなほそっこい体で戦うなんてやめとけやめとけ、けがしないうちに降参しな」
「めんどくさいからその所存」
「……ちなみに対戦相手、流血のマクベスという通り名がついてる」

 そっとキースが夜明の耳元に話しかける。
 マクベスは不敵な笑みを浮かべながらポキポキと腕を鳴らしている。
 夜明はめんどくさそうに死んだような眼をしながらマクベスを見た。

「ねえ、私本当にあのク○ーズの首領みたいなやつと戦わないといけないの?じゃんけんでいいんじゃないの」
「夜明」
「なに」

 今まで口を閉ざしていたワッツが夜明に話しかける。
 ワッツの方向を振り返る夜明。

「此奴に勝ったらクレープ1ダースくれてやる」
「この夜明、ジークリンデ家用心棒にかけて必ずや勝利して見せます!!」
「粋がよくなったじゃねえかお嬢ちゃん!ケガしても知らねえぞ!!」

 がっと、バットを構えながらいつものローテンションの夜明とは思えない大きな声を出しながらマクベスに向かう。
 マクベスは少し驚いたように一歩下がったが、夜明に負けないぐらいの声で叫ぶ。

(さすがワッツ様、夜明の性格をよく理解しておられる)

 キースは感心したように思わず頷いた。