コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Hello,world! ( No.15 )
- 日時: 2016/03/13 18:02
- 名前: 海の幸 (ID: EwVeSaUz)
「おいキース。お前熱あるんじゃ……」
「そんなこと……ありません」
いつものキースの顔色とは違う。顔がほんのり赤かった。
ワッツは彼の額に手を当てる。
すると驚いたようにワッツは後ずさりした。
「温っ。なんだ、熱湯みたいだったぞ」
「まじか。マジだ。39度ある」
「これしき何ともありません」
そこら辺にあった温度計で夜明はキースの熱を測ると、39度もあった。
キースはゼエゼエと咳き込みながら言った。
だがこれはどう見てもそこら辺のメイドより役に立たないことは明確だった。
ワッツは背中を押してキースを自室に帰ることを促す。
「駄目です……! 夜明だけじゃ心配事しかないんです! むしろ熱が上がります」
「言ってくれるじゃねぇかクソエリート」
病人らしく弱々しい言葉など微塵もなかった。
そして地味に夜明を非難する。これが夜明を不快にさせた一番の要因だ。そして地味にショックでもあった。
——……そこまで信用がないのかと。
「今日は執事長である私が行かないと示しがつきません。……大丈夫です」
「いやいや。むしろその状態で動かれたら主人としてハラハラするっての」
フラフラと歩きだすキースを止めようとするワッツ。
だが主人である彼の言葉にもかかわらず言うことを聞こうとしない。おそらく、彼のプライドにかかわるのだろう。
しばらく黙っていた夜明が口を出した。
「ねえ、執事長って今日何すんの?」
「……? 今日は、面接する受験者をメイドたちと出迎え、そのあと、お前と一緒に見極めをし、最後に結果を発表してしばらくしたら受験者を見送るんだ」
「それ全部ワッツは関わらないの?」
「ああ。これしきの事で次期御当主は出ない」
「そうか……」
「それが……どうした?」
うーんとしばらく考え込む夜明。
怪訝な顔をしながらキースは彼女を見る。しばらくしたら、夜明が何かよからぬことを思いついたようだ。
無表情でキースに近づいていく。
そして……。
「今日だけ死ね」
「……ぐっ!」
……そして、鉄板を殴りつけたような鈍い音が屋敷の廊下内に響き渡った。
それは、夜明がキースの鳩尾に拳を打ち込んだからだ。
彼女の力で殴られたらとんでもないことになる。案の定、キースは気絶していた。だが顔はイケメン補正のためか、白目は向いていなかった。
「……よ、夜明! お前……」
「ご当主」
「!」
初めて……、いや、久しぶりかもしれない。
正式な名で彼女に呼ばれたのは。思わずワッツは身構える。
夜明は気絶しているキースの身ぐるみを容赦なく剥ぐと、その服——執事服をワッツに突き出した。
「今日だけ、ワッツが執事長になって」
「…………は?」
ワッツの間抜けな声が廊下に響く。