コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Hello,world! ( No.5 )
- 日時: 2016/01/10 20:45
- 名前: 海の幸 (ID: n2LUyceb)
「せっかくの休日なのに教科書買いに行くとかツイてねーわ」
「今まで勉強道具なしで生きてきたお前にびっくりだ」
土曜日の午後。
夜明とワッツは教科書を買いに書店へ向かっていた。昼ご飯を食べ終わった後、本来ならば1人で夜明は書店へ向かうはずだったのだが——暇だといい始めたワッツは夜明の意見も聞かずに半ば強制的に着いてきた。
送迎係の高齢の使いのものが送ろうかとワッツに提案したが彼はたまに歩くと言ったため、こうして夜明とロードウォークしている。
「帰りが怖いな……。荷物が嵩張る……。そうか、ワッツに持たせるか」
「おい、仮にも主人だぞ。主人に荷物持たせる用心棒とか聞いたことないわ」
「そろそろアラサーになるんだから運動しとけ」
「まだ俺は26だがな」
そうこう話歩いていくうちに、小さな悲鳴が聞こえた。
その悲鳴の声は高く女性のものだと一瞬で把握した。
なんだ、と思いながら夜明とワッツはあたりを見渡す。すると、すぐ近く、少し歩いた先の道に男3人とその男3人によって壁に追い込まれている女性を発見した。
そして、ナンパだと即座に理解した。
「こんな白昼堂々とナンパする奴ら初めて見たなー」
「おいおい大将、そんなこと言ってる場合じゃないみたいやで。あの人困ってるよ」
正直、2人はテンプレートで典型的な男3人のナンパに若干引いていた。昭和じみている。そう思う他なかったのだ。
だが、女性が困っているのは事実。
通りすがりついでに助けることにした。
「行け夜明」
「おっすオラ夜明!よろしくねそこの昭和メンズども」
「ギャー—————!!」
ワッツの言い放った瞬間に夜明は飛び出した。
そして自己紹介すると同時に夜明は1人に膝蹴り、もう1人には頭部チョップ、そして最後の1人には頭突きを食らわせた。
男3人は悲鳴を上げたと同時に気絶した。ついでに補足するならば男3人たちは泡を吹いていた。
「お嬢さん、あんた大丈夫か?」
「は、はい……ありがとうございます……」
「どうするワッツ此奴ら焼肉にするか?」
「お前はちょっと黙ってなさい」
ワッツの言葉に安心したように女性は安堵のため息をついた。
そんなことどうでもよさそうに夜明は気絶した男3人の胸ぐらをつかみあげる。
「ありがとうございました!私、アイリスといいます。今日イギリスから日本に来たばかりなんです。さっき、この人たちに急に呼び止められて……」
「ほお、イギリス人。英語のテストを代わってほしいですな」
「そうだったか……。目的地まで送ろうか?」
「いえ、1人で大丈夫です。せめて……場所を教えてくれないでしょうか?」
「場所?」
「まさかワッツ送り狼になる気じゃないだろうな」
アイリスは少し息を吸い込むと、言いにくそうに口を開いた。
「はい!このあたりにジークリンデ財閥のお屋敷があると思うのですが……。私ちょうどそこに用があるんです。どの方角かわかりませんか?」
「あ、あっちだ」
「ありがとうございます!それではお礼ができないのは心苦しいですが、ここで失礼します」
ワッツはジークリンデ家とは真逆の方向を指さした。純粋なアイリスはうれしそうに顔をほころばせると、華麗に一礼してその場を去っていった。
しばらく黙っていた2人だったが夜明は不審げなまなざしでワッツを見る。
「……ねぇ、さっき指さしてた方角、あんたんちと真逆なんだけど」
「……今までジークリンデ家に用事あるって言ったやつらに碌なやつがいないってわかってるから……つい……」
「このアホサーが」
ちなみにこの後困り果てたアイリスが交番のおまわりさんに連れていかれるまであと30分。