コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: Hello,world! ( No.7 )
- 日時: 2016/01/16 13:30
- 名前: 海の幸 (ID: n2LUyceb)
「夜明モン。このお見合いをなしにできる方法はないか?」
「残念ながら私はドラ○モンじゃないんで」
ため息を付きながらワッツはスーツのネクタイを締める。
そう。今日はイギリス会社社長のご令嬢・アイリスと世界が多分誇ると思われるジークリンデ財閥の長男にして御曹司・ワッツのお見合いなのである。
落胆した声で刀袋の中にある金属バットを拭いている夜明にダメもとで言ってみたが、やはり一刀両断された。
キュッキュと小気味よい音を立てながら夜明は金属バットを拭いていく。
「まあ案外お見合い結婚もいいもんかもしれないよ」
「お前はわかってないからそう言えるんだ。普通の一般人のお見合いとはわけが違うんだよ、なんていうか……堅苦しすぎるというか……」
「ハッハッハこのクソボンボン、一般人バカにしやがった」
「ワッツ様、車の準備が整いました」
「あ、キースだ」
失礼します、という声とともにキースがワッツの部屋の扉を開ける。
もともとの奴の顔がそうさせているのか、奇麗に調達された燕尾服がキースをますますイケメンにさせていた。
キースは夜明を一瞥すると、小さな声で「粗相だけはするなよ」と耳打ちをした。
「お前は私を何だと思ってるんだ」
怪訝な目でこちらを見つけるキースに夜明は死んだ目をした。
まあ、大していつもと変わらないと感じた夜明は金属バットを刀袋にしまう。
今日、キースだけではなく、夜明もワッツの護衛ということでこのお見合いに出席することになっている。つまり、メイド・執事・用心棒(護衛)を含めた5人がワッツに同伴するということだ。
「あー……。行きたくないな」
「腹括れ」
そう言って夜明はワッツのスーツの裾を引っ張りながら無駄に派手な外に待ち構えているリムジンへと足を急がせた。
(……つーか、年齢的にアイリスお嬢様キースをお見合い相手だと勘違いしないといいけど)
***
「よくいらっしゃいました、ワッツ殿。ささ、席にお掛け下さい」
「ああ……はい」
ニコニコと、アイリスの父の使いの老人が高級ホテルの一室に案内した。
苦笑いを浮かべながらワッツは席に着く。縦に長いテーブルには豪華な料理が並んであり、それは夜明の食欲を掻き立てるには十分だった。
(めっちゃ食べたい)
「食べたら殺す」
「なぜ私の心がわかった」
ワッツの背後に並ぶ夜明とワッツ。
思わずそう思った夜明の心を感知したらしいワッツは本気の殺意を彼女につきたてながら横目でにらみつける。
「では、皆さんそろったのでお見合いを始めましょうか」
可憐な少女、アイリスの隣に座る、いかにもイギリス紳士といえる風貌のアイリスの父親はニコニコとしながらそう言った。
その瞬間、スッと笑顔のまま黙っていたアイリスが手を挙げた。
「あの……早速で申し訳ないのですが。私とワッツ様が結婚した暁には必ずその後ろにいる執事様をつけてほしいのです」
(((な、なんですと—————っ!!??)))
お嬢様の爆弾発言に夜明とワッツ、そして指名されたキースは驚愕した。
そして夜明は思った。
この女、ワッツをダシにしてキースを奪取する気だな、と。