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Re: ぞんびちゃんの日常。 ( No.14 )
日時: 2016/01/13 20:20
名前: worm (ID: YC3fWPpt)

At night

「関くん」

 泣きそうなビノ声が聞こえる。
 どうしたんだろう。
 俺は目を開けて、気づく。
























「夜に、なっちゃった。」

 俺はどうも寝すぎてしまったようだ。
 ため息をついて、右太ももにある銃を手に取った。
 チャキ、と金属の音がして、光る。



「えへへっ、関くん、美味しそう」

 ビノはうっとりとした表情で言った。
 ゾンビは食べなくても生きていけるが、夜になると嫌でも人を食べることしか出来なくなる。

 食べ物は、人間。

 ゾンビの記憶は特殊で、夜の間の記憶を朝になれば失ってしまう。
 自分が人を食べるということも夜になるまで知らない。
 夜になれば自分は人間を食べなければ、と思って人を襲うのだ。
 なので、夜に人を襲って食べても朝になればなぜか人が目の前で死んでいる、という状況になる。
 これを阻止するために俺達が居る。

「お腹空いた」

 ビノの髪が揺れ、動き出す。
 食べようとしてくるので、俺はそれを交わす。
 
 また、近づいてくる。
 ビノの表情は相変わらずうっとりとしている。
 人間でいう大好物が目の前にあってそれがやっと食べられる、という状況だ。
 瞳の色が、いつもと違う黒がかった赤色をしている。
 血の色だ。

「俺の、嫌いな色...」

 ビノが口を開けた。
 ゾンビに食われれば、感染して自分もゾンビになる。
 分かっているのに、なぜか動けなった。
 昔の記憶が、蘇る。
 今まではこんなこと無かったのに。

「何で...っ」

 手が震える。

 目の前でビノが笑った。
 作り物みたいに、冷たく。 

「関先輩っ!」

 そう声がして、銃の発砲音が響く。
 ビノはそれを素早く交わした。 
 俺はそれにはっとして、冷静になった。
 意識を取り戻してくれたのは水城だった。

「お供、します」
「助かる」

 二人で銃を構える。
 大丈夫。いける。

「えへ...二人共...美味しそう」

 俺達の銃の発砲音が鳴り響く。
 ビノはそれを避けながら近寄ってくる。
 それを避けて、また打って。
 それを何回か繰り返すと俺達も限界に近づいてきた。

「..はぁ、先輩っ、そろそろ...限界です」
「俺がやる。任せろ」

 そう言ってビノの額に向けて銃口を向ける。
 いつも、やってきたように。できる。大丈夫。










「ビノ、眠ってくれ」

 パァン、と銃声が響いた。