コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 俺と少女の1日ミッション ( No.4 )
日時: 2016/03/31 13:37
名前: ろろ (ID: HSAwT2Pg)

 しにても信じられねぇな、だってこんなピンピンしてんだぜ? どうやったら死ぬんだよ。はっ! もしかして車に轢かれて死ぬとかそんなんか!? 顔や体がぐちゃぐちゃになって終わるパターンか……辛すぎるぜ。
 でも、本当に俺が死ぬとなると、やり残したことだらけなんだが。夢はまだないにしても、今気になっているアニメやゲーム、それから小説だって色々あるのに、それに……。
 通学路をそんな考え事をしながら歩いているとある人物が俺に話しかけてきた。
「あれ、一宮くんじゃん。どうしたの? そんな暗い顔して、あ! もしやこの前新しく買ったって言ってたゲーム機壊した?」
 俺は声がした方を見る。そこにはとても見覚えのある少女が、通学鞄をもっている方の手で俺に向かって手をふっていた。
「あ、麻川」
 そう、麻川。この少女が麻川 結だ。さっきあの暴言毒舌少女、優月に告れと言われた、俺が今日、強制的に告らされる、告白しなければならない相手。
 それをやるんだったら、死んだほうがましなんじゃね? と思わされる相手。と言うか、告ったら普通にこいつを好きな奴等に殺される。いつもなぜか一緒にいることがあるだけで今もう、『麻川結ちゃんファンクラブ』という本当にそういうのあるんだ! 存在してるんだ! とか思う隊に目を付けられている。それでもなんとかギリギリ逃げられているのに、告ったら本気で殺される。
 と言うか、こいつに告ったら最後本当にそいつらに消されるのだ。現にこの前こいつに告った俺のクラスメイトが現在休学中だ。怖すぎる。
 いや! でも、俺はこいつのことが好きだ。こいつのことは好きなんだが、好きなんだが!! しかし、どう考えたって、俺にはどう考えても高嶺の花過ぎて絶対無理。俺なんか顔なんて一般男子の中の下位だし、体型だって、運動なんてくそ食らえとか思ってやってないから筋肉なんてあまりない。皆無とは言わないが、無い。
 それに比べてこいつといったら、やばい。半端ない。容姿端麗、誰もが目にはいって見蕩れるような黒い肩まである髪、華奢で今にも折れそうな腕、足。
 そんな彼女は今、黒いがベースで赤いラインが入っているスカートは膝丈ぴったりのセーラー服を着ている。学校の制服だ。彼女の場合、それプラス白いブレザーを着ていて、とても似合っている。まるで漫画のヒロインでいそうな感じだ。
 そんな容姿もあってからか、都会にいくと芸能人にスカウトされるなんて当たり前。実際に俺と行きたいイベントがかぶって、一緒に行ったら普通に1日で4回ぐらいスカウトされてた。びびった。こいつはヤバイ。と、本気で思った。そんなやつだ。
「おはよう、でもゲーム機壊したぐらいでこの世の終わりみたいな顔してちゃダメだよ。見ててこっちがなんかこう——変な気持ちになるから」
 麻川は自分で言っていることを俺にちゃんと理解させようとして、手であやふやなジェスチャーを加える。しかし、本人には言わないが加えられた方がもっと解りにくくなった。こいつ不器用すぎる。可愛すぎる。
「いや、俺、今日ゲーム機壊してないけど。と言うか壊したのなら、学校に来ねえ。三時間ほど自分を攻め続けたあとゲーム機買いに玩具屋に走る!! そして家に帰ってやりまくる! 遊びまくる! たぶん二週間ぐらい学校も休む!」
「うわぁ、想像したよりも落ちぶれてるよこの人、誰かこの人を助けてあげて。私には到底無理だ」
 諦められた。ゴミを見る目で麻川が俺を見る。え、辛すぎる。え? これが普通じゃねぇの?
「え、そんなダメかな?」
「ダメだよ!! ダメ! そんなことしたら私があんたの顔見れなくて寂しいじゃん!!」
「え?」
 かあああっと、まるで絵の具を付けたかのように麻川の顔が赤くなっていく。え? え? 今の発言なに?
「いっ! 今の発言は忘れて!! というか忘れろ!!」
 そう言って麻川は右手に持っていたスクールバックを俺の腰に向けてぶん殴ってきた。もちろん俺の腰にヒットする。それと共に制服の黒いスカートが翻る。でもこいつの場合、タイツはいてるからあれが見えないんだけど。ナマ足も見えないんだけど。
「いったっ!! 何すんだよ!!」
 俺は麻川に殴られた腰を押さえる。
 というかすごく痛いんだけど。殴られたときにグキッとか聞こえちゃいけない音したんだけど。なに入ってるんだよその鞄。
「ふっ! 私の教科書、辞書、水筒、趣味の読書本四冊が入っているバックの威力は半端じゃないよ」
 こいつ! どや顔で言ってきやがった!! そりゃ痛いはずだよ!! 痛がんない方がおかしいよ!! ていうかいつもそんなもん持ってなんにもない顔で登校してたの!? 強い! こいつ強いぞ!!
「なんてもん俺の腰に投げてんだよ!! どうりですごい痛いはずだよ!!」
 俺は涙目になりながら反論する。腰がじんじんする。すごく痛てぇ。だがしかし、彼女は冷たい瞳でこう言ったのだった。
「聞いた方が悪い」
「いや、理不尽すぎだろ!」
「ま、そう言うことだから。じゃあ私は先にいくね。そろそろ予鈴鳴りそうだけど、遅刻しないように頑張って」
 じゃ、おさき! と、言って彼女は走って逃げるかの如く、去って行ってしまった。
 俺は腕時計を見る。時刻は八時二十分、予鈴がなるまであと十分だった。
「まじかよ」
 俺は絶望的な感情でなにもしたくなくなったが、先生にだけには怒られたくないので、俺の人生の最後の日に怒られたくないので、重い体を引きずる感覚で走り出した。
 学校には予鈴一分前についた。