コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 渦中を進む 【茨の道を踏まずに歩け】 ( No.3 )
- 日時: 2016/01/22 01:04
- 名前: 明太子 (ID: nbzMXegi)
次の日、下校中に俺等はまた黒服に囲まれていた。
コイツらは学習をしないのかよ、人数まで増やしやがって。
そんなにトラウマ作りたいなら手伝ってやんよ。
「なぁ兄ちゃんよぉ......そこまでして精神病棟へ行きたいのか?」
「い、いやいやいや!滅相もない!」
俺に浮かんだのは呆れのみだ、もはや怒りすら湧いてこない。
そんな感情を露骨にぶつけると相手は顔を青く__特に昨日の黒服は顔がお通夜ver__にした
まぁ、こんなところで話を始めようものなら問答無用で110番だ。
昨日は大人の怒声が近所の人に聞こえている、お偉いさんと言えど面倒な事に出来る。
生憎こちとら親友の危機なんだ、全力で守らせて貰うぜ。
「んで、兄ちゃんは昨日から何か改善して来たのか?」
「ああ、昨日は冷静じゃなかったんだ。今回は.....」
兄ちゃんが視線を突然そらして右を見た
不審に思い、俺は視線の後を追いかけて同じ方向を見た。
そこにあったのは.....
「アレを用意した」
「おいおいウソだろ.....」
黒光りする手入れの行き届いた外装
少し大きめのタイヤに長めのボディ。
誰もが知ってるであろう高級車__リムジンである。
近付くにつれてスピードをゆっくりにして、目の前で止まった。
「アンタらガチで偉い人だったんだな、敬語使ってやろうか?」
俺が若干の皮肉を込めて言うと、兄ちゃんは吹き出して笑った。
「これを見てまだ態度を改めないとは.....昨日と変わらずの剛胆さだ!」
余程気に入ったのだろう、おかしくて堪らない様子だ。
そこまで笑う事でもあるまいに、まったく.......
しばらく笑った後に、兄ちゃんは名刺を取り出した
「名乗りが遅れてすまない、俺は鷹村士堂という名前だ」
俺と狼谷に名刺を渡す鷹村とやら。
名刺に書かれていたのは「私立 清藍高等学校 教員」 という肩書きだった。
(私立清藍高校.....倍率がクソ高いエリート高校じゃねぇか!?)
ここら辺で恐らく最もハイレベルの高校だ
金持ち、頭脳明晰、運動神経抜群が最低条件の超エリート高校
入る事がステータス、もし中退しても引く手多数という噂もある。
学力のない俺等とは無縁の学校のはずだが......
「驚いてくれて何より、やっと年相応の反応がみれた」
企みが成功しニヤリとする士堂の兄ちゃん。
これが黒服ならまた口喧嘩してたが、俺はこの兄ちゃんの事が嫌いな訳じゃないからな。
間違えをすぐに直そうとする積極的な姿勢は素晴らしいと思う。
しかしこのような事をしてまで狼谷を欲しがるとは.....狼谷は何者だ?
「なぁ狼谷」
「どうしたの湧水?」
「今は良いが、全部話終わったら1から十まで教えろよな」
「.....うん、分かったよ。ごめんね?」
「構わんよ、もう10年に近い付き合いじゃねぇか」
さすがにこれは黙ってられんと思い狼谷へ伝えると少し暗い顔をして答えた。
コイツらしくない、恐らく深い事情なんだな。
しかしいつまでもへこんでもらっちゃ困る。
「そいやっ」
「って痛ぁ!?」
沈み込んだ雰囲気を払拭するために俺はデコピンした。
ビシッ!と音がして狼谷がのけ反った。
痛かったのだろう、涙目になり見上げて来た。
「暗い空気が好きなら都会のビルの合間で寝泊まりしたらどうだ?」
「慰めって言葉知ってるかな?」
「ああ、知ってるぜ。楽にする事だろ?」
「さいってー」
軽口を叩いているといつもの元気が戻って来たようで、明るい笑顔を見せ始めた。
それで良い
暗い空気、重い空気はお前に合わん。
どことなく優しい気持ちになると士堂の兄ちゃんが
「仲が良いのは結構だが乗ってくれないか?」
と、少し呆れ気味に言った。
すっかり忘れていたが交渉への足を用意されているんだ、早く乗らねば。
そう思い、車は狼谷と俺を乗せて走り出した。
この先に何があるのかをまだ知らずに......