コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

2話 とある荒野で ( No.11 )
日時: 2016/01/28 18:57
名前: りあむ* (ID: .pUthb6u)

*とある荒野で 2
 


「おっ、これは上等じゃねーか……」

 まるで道端で小銭でも見つけたような具合に、男は荒野の少女を鞭で絡め取りました。
 人を人とも思わない、その所業。

「マードが滅びたってんで来てみら、手柄だな。どっから流れてきたかわかんねぇが、こりゃ高貴な貴族のタマかもしんねぇ……! へへへ」

 串刺し王の、滅びの知らせを受けて、難民を漁りにきた人買いでしょう。
 黒馬に乗る男は、じっとりと少女の全身を眺め回しました。そして、後ろの荷台に少女を放り込もうとした、その手を止めます。

 大事な商品だ、傷つけるわけにはいかないと思い至ったように、小脇に大事そうに抱えました。

 数百年の歴史を持つ、大帝国マード。
 最近の風の噂では、串刺し王の気まぐれで、おととい、十六人もの罪なき人々が虐殺されたといいます。

 そして今日、帝都サムハルより、血と怒りの匂いが漂ってきます。

 人買いは足音薄く、荒野を駆け抜けて行きます。腕の中には、幼い少女。根城へ向かうのでしょう。
 こうなっては、もう。誰の救いの手も少女に届きません。

 ここは帝都の郊外です。
 見渡す限り、荒野の赤い地面。遠くの方で、微かに硝煙があがっています。