コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

3話 とんがり山の鳥かごの家 ( No.24 )
日時: 2016/03/23 17:01
名前: りあむ* (ID: .pUthb6u)

*とんがり山の鳥かごの家 4
 


「きゃっ……ぁあああ!!」

 身体が落ちていく感覚に、反射的に浮遊魔法をかけようとしました。そこでハッと気がつきました。

 家の中で、魔法は────────

「ニアッ……!」

 やがてくるであろう衝撃に備えなければ。防御姿勢を取ります。眼前に迫り来る床。思わずギュッと目をつむりました。

「っ…………!」

 ドッスーン!!

 ドンッと身体に感じた衝撃は、思っていたよりもとても小さく、私は気を失わずにすみました。よ、よかった……。

 あ、れ……?
 でも、背中に当たる感覚は床にしては柔らかくて……。

「ニアッ! なんでそんな危ないことしたの?!」

 血の気が引いていた身体から感覚が戻り始め、ギュッと抱きしめられる感覚と、耳元で叫ばれるセンの声に気がつきます。

「セ、ン……?」
「そうだよ、僕が来なかったらどうなってたか……!!」

 センが私をさらにギュッと抱きしめます。
 センを安心させようと思わず抱きしめ返そうとして、彼の冷たい体温と、その肩が震えていることにやっと気がつきました。ハァッハァッと荒い呼吸は時々詰まって、嗚咽のように聞こえます。
 その震えが私に伝わってきて、彼の不安があまりにも大きいものだと気がつきました。

「セ、セン……ごめんなさい……」

 センがこんなに取り乱しているのを初めて見ました。私はどうすればいいのかわからなくて、恐る恐るセンの背中に腕を回しました。

「ニア……ニアッ!! もしニアがいなくなったら、と考えただけで……っ」
「セン、私はここにいます、大丈夫、です、から……!」

 センは私を存在を確かめるように掻き抱きました。どうしよう、私は悪いことをしてしまったのでしょう。私もだんだん涙が溢れてきて、嗚咽になりました。

「セン、ごめんなさいっ、ごめん、なさいっ……」

 私の軽率な行動が、センをこんなに怯えさせてしまう。私はそのことに気がついて、センを悲しませるようなことはもうしないと固く心に誓いました。

 しばらく抱き合っていた私たちは、少しずつ落ち着いてきました。センが私を抱き締めたまま言います。

「なんでこうなったの? ニア」
「きゅ、救急箱……」

 まだ少し震える声で問うセンに、私は一生懸命答えました。うん、うんとセンは聞いてくれて、最後にギュッと私を抱きしめて、「後で博士を締めようね」と言いました。シメルの意味はわからないままですが、その言葉を聞いて私は、とても安心するのがわかりました。

「ちゃんと防御魔法を使わなきゃダメだよ、ニア」
「で、でも……」

 私と目を合わせて言いました。センの瞳には有無を言わさない迫力があります。でも……。

「約束、したじゃないですか」
「……そんなこと、」
「私たち『家族』の、大事な決まりごとです……」

 家族に固執する私を、センはどう思ったかわかりません。でもセンは、もう一度ギュッと抱きしめて、「もう危ないことはしないこと」と私に約束させると、にこりと笑って私の額にキスをしました。

「僕のニア、お願い。僕のそばから離れないで。もう危ないことはしないで」
「…………はい……セン」