コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

3話 とんがり山の鳥籠の家族 ( No.35 )
日時: 2016/12/22 02:06
名前: りあむ* ◆raPHJxVphk (ID: .pUthb6u)

ふぁぁぁお久しぶりです……!!

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センがニアを助けに家に戻ってすぐ、ニアの悲鳴が聞こえてきました。

「……絶対今、どこかであーちゃん落ちたよね。だだだ大丈夫かな」
「いやセンだから、どうせニアの下敷きだろ」
「あははは……フラグかな……」



とんがり山の鳥籠の家族
『フラグ中のふたりが戻ってくるまでのひとりと一匹。』



博士は立ち上がり、難しい顔をして腕を組みました。そして地面を眺めます。

「黒い雨かぁ……あの国に何かあったのかなぁ」
「まぁ十中八九、間違いねぇだろうな」

黒い雨を受けた地面は、腐るかと思いきや、まるで生き返ったかのようにキラキラと輝いています。

実は博士もギルバートも、この雨に害があるとはお考えでないようです。黒い雨の心あたりがあるのでしょう。
あの国、とは一体どこのことなのでしょうか。

「僕はあの国には何も起こらないでほしいんだけどね。それに、僕には……」
「わかってる。あの子たちがいるような場所で言うんじゃねぇ。聞かれんだろ」
「うん……でも今回ばかりは、あの子たちに迷惑かけちゃうなぁ」

呟くように言葉を吐くと、博士は肩を落としました。

「あの子たちと離れるの辛い……」
「まぁ、そうだな…………でもあいつらだろうがよ。本当に辛いのは」

ギルバートはそっと博士に言いました。博士は驚き、まるでわからないというように首を振ります。

「なんで?」

ギルバートはやるせない溜め息をつきました。

「じじいがいなくなって本当に困んのはあいつらだろーが。お前は『寂しい』で済むかしんねーけど、あいつらにとっちゃ死ぬか生きるかの重大な問題だろ」
「…………ときどきギルが本当に使い魔なのかわからなくなる。ギルの方がしっかりしててさー」
「…………ときどきじじいが何故そんなこともわかんねぇのかわからなくなる」

ギルバートはなんだかんだと言っても、二人のことが大好きなのでしょう。優しく出来ないのは、愛せないのは、使い魔であるからでしょうか。

博士も溜め息をつきました。

「僕には必要のないものだったからね。気づかいとか愛情とか」
「…………こんなじじいの使い魔である俺可哀想」
「ごめんね、ギル。僕にはわからないことが多すぎる。いつもあの子たちを悲しませてしまうし、僕には烏滸がましくてあの子たちに守るなんて言えない。あの子たちにとって、僕は酷だね。僕は、ちゃんと保護者になれているのかなぁ…………僕は、ちゃんと愛せているのかなぁ…………」

博士は不安そうに、軽く目をつむりました。
ギルバートは立ち上がりました。

「どこにも完璧な親なんていねぇし。……見てやれよ、あんなにいい子らじゃんよ。じじいはじじいのわりにしっかり子育てしてるよ」

ギルバートは良い笑顔で「鳥肌立つけどな」と言いました。

「そっかぁ……うんよかった」

博士はやっと笑顔になって、家の方に向き直りました。きっと彼は気づいていないのでしょう。家を見つめる彼の瞳には、子どもたちに対する慈しみが溢れています。

この不思議な家族の関係は、いつ覗いても温かい淡い光を放っています。それは風前の灯火のようで、しかし確実に守られている光なのです。
そして今、その小さな灯火を守る温かい手が、そっと、そばを離れようとしていました。


「で、はいコレ、サンプル。黒い雨に濡れたやつ」
「ありがとー、ギルは仕事が早いね。……あ、これ僕のパンツ」