コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: —+;*:近くて遠い距離;*:+— ( No.3 )
- 日時: 2016/01/30 17:53
- 名前: 佳織* (ID: kI1tZ/UV)
#2:心の内。
———君は、 いつだって
あたしの心を読み解いてくれる。
そんな人だったね———。
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翌日。
すっかり泣き腫らした顔を鏡で見て
改めてひどい顏だと思った。
でも、 休むわけにもいかないので
あたしは家を出た。
「行ってきます…」
憂鬱な一日の始まりだ。
■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■
駅から学校までのいつもと変わらない通学路をあたしは重い足取りで歩いていた。
その時。勢いよく後ろから声をかけられた。
「おっはよー!!可憐っ!!」
振り返ると。
そこには、満面の笑顔を浮かべた元気いっぱいの女子・水沢由美がいた。
由美は同じクラスで一番仲の良い友達。
気を使わないで気軽に話せる相手だ。
「由美っ!!おはよ」
なるべくいつも通りを装ってあたしも笑顔でそう返した。
———爽にフラれた。そのことを
あたしは何となく由美に話すことができなかった。
「そういやぁさぁ…もうすぐバレンタインだねっ」
由美に言われて気づく。
そっか。…あと、2週間ちょっとで、もうそんな時期なんだ。
爽にフラれる前だったら…きっともっと楽しみだったのになぁ。
「可憐はさぁ…誰かにあげないの??つーか、好きな人とかいないの??」
——好きな人。
今は振ってほしくなかった話題が来て。
あたしは思わず顔をしかめてしまった。
慌てていつもの調子で由美に返した。
「いっ…いないよーそんな人!!今年も友チョコとして由美に渡すしっ。後は乃衣にも渡そうかなー」
乃衣っていうのは、同じクラスで由美と同じく一番仲の良い子だ。
あたし達はいつも3人で行動している。
いわゆるいつものメンツ、略していつメンってやつだ。
「えー。可憐、可愛いのにもったいないなぁ。絶対可憐に告白されて断る人なんかいないのにー」
由美に悪気がないってことは知っている。
仕方ない。…だって、由美は
あたしが爽を好きだってことを知らなかったんだから。
…と、いうか
あたしが打ち明けられなかっただけ、 なんだ。
「……由美は??誰かにあげたりしないの??てか、由美こそ好きな人いるんじゃないの??」
さりげなく話題を変えた。
これ以上、あたしの好きな人の話を続けていたくなかったから。
由美は少しの間を開けた後。
頬を赤らめて答えた。
「———あー…わたしはいるよ??…好きな人」
一瞬、驚きのあまり声が出なかった。
え…由美…好きな人いるんだ。
「うっそ!!本当に!??いっ…いつの間に由美にそんな人が!??」
「あははっ…可憐、リアクションいいねー」
そりゃあ、驚くよ!!
だって、今まで恋愛になんか興味なさそうにしてた由美に好きな人ができるなんてっ!!
友人としては驚きだ。
「えっ…じゃあ、その人にあげるの??」
「うん…一応、手作りチョコで頑張って渡して…そんで告白しようかなって」
こっ…告白、だと!??
「すごい…由美ってば大胆…上手くいったら教えてね」
「当ったり前よー!!あっ…でもフラれた時はわたしのこと慰めてよ—」
「もうっ…由美ってば悪い冗談止めてね」
「あははっ…可憐も好きな人できたら教えてねー!!わたしと乃衣で全力で応援しちゃうから!!」
「……うん、ありがとう」
———応援する。
由美のその言葉に少しだけ胸の奥が痛んだ。
あたしは
もう、 とっくに
ずっと好きだった人に フラれてしまったから。
■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □
下駄箱へ着いた途端。
「おっ…如月ー!!今、朝練終わりかい??」
由美のその声にあたしは思わず肩がビクッと揺れた。
そういえば昨日…
如月くんに…泣いている所を見られていたんだっけ??
ヤバイ。
今、 その話題を振られたら———。
「水沢か…相変わらず今日も騒がしいな」
「なんとでも言えー!!もうすぐ試合だっけ??」
「まぁな…」
そこで如月くんとばっちり目が合ってしまった。
あたしは慌てて視線を逸らす。
「ごめん、由美。あたし…ちょっとトイレ寄ってから教室行くね」
「えっ…うん…またあとで」
なんとなく、 如月くんの顔を直視できなくて。
あたしは足早に教室へと向かった。
——だけど。
「———美園さん」
振り返ると。
後から走って追いかけてくる
如月くんがいた。
少しだけ息が弾んでいた。
「……何か、用??」
話したくなんかなかったから。
あの場から立ち去ったのに。
なんで…追いかけてなんかきたの??
「……昨日…もしかして、俺…余計だった??」
だけど、 如月くんが出した話は。
何で泣いてたのか、 じゃなかった。
てっきり、 昨日のことについて尋問されるかと思ったのに。
そうじゃなかったことに
あたしは驚きでいっぱいだった。
「もし…その…昨日の俺の気遣いが余計だったのなら謝るよ。ごめん」
如月くんのそんな優しさに。
あたしは零れ落ちそうになった涙を抑えながら答えた。
「ううんっ!!全然余慶なんかじゃないよ。むしろ…ありがとう。てか、ごめんね…なんか気を遣わせてしまって…それでっ…昨日泣いてたことなんだけど——」
「いいよ、無理して言わなくて。つーか、泣いてたこと…誰にも言ってねーから気にすんな」
あたしが言いかけたことに対して横から遮る如月くんの声。
あたしの心なんか見透かしているようで…
かなわない…そう思った。
「ありがとう…如月くん。ハンカチは後で洗って返すね」
「……別に洗わなくても」
「いいのっ!!せめてものお礼だから」
「……そっか。じゃあ、受け取っとく」
そう言って、如月くんは教室へと入って行った。
その背中を…
あたしは、 ただ… 見つめていた———。