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- Re: 偽りと解放 〜真実を求め汝は彷徨うか〜 ( No.4 )
- 日時: 2016/02/06 21:57
- 名前: リリディム (ID: I.inwBVK)
「くっ……!」
紳士は急いで零無から離れると、手にした鞭をピシッと鳴らした。
「現われなさい! 私の愛らしい獣達よ!」
グルルルと、肉食の獣の声が聞こえる。 紳士が呼び出したのは百獣の王・ライオン。
龍燈はほう、と声を漏らすと、何の【能力】か考え始めた。
「獣を操る【能力】か……確か、【獣使い】(テイマー)と呼ばれる【能力】があったな」
「その通り……私の【能力】なら、百獣の王すらも忠実なペットになるのです」
紳士はもう一度鞭を鳴らすと、ライオンに命令を下した。
「行くのです! 先ずは其処の老人から引き裂きなさい!」
「おーおー、龍燈。 テメェ嘗められてんぞ?」
「強ち間違いではないがのう……」
苦笑しながら、正面から突っ込んでくるライオン。 何処からか現れて紳士の鞭を止めたり、一瞬で僕の後ろに回るのだ。 きっと避けられるだろう攻撃。
だが龍燈は……避けずに立っていた。
「!? な、何で立ち止まっているんだ!?」
「いや……」
龍燈は懐から煙管を取り出し、丸めた刻み煙草に火を着け、紫煙を燻らす。 一つ煙を吐いた後、ゆっくりと爪を立てて腕を振り下ろすライオンを睨みつけた。
「この程度の攻撃……我の10秒よりも遅い」
刹那、ライオンの身体が無惨に細切れと化した。
「何!? 馬鹿な!?」
「我が爪『黒揚羽』……『死の象徴』を意味するこの黒き羽が如し爪は、凡ゆる生命の命を奪い去る」
ライオンの血を浴びて尚も崩れぬ表情。 そして、光の込もらぬ金の瞳が紳士を見定めた。
「失敬。 我の【能力】は【韋駄天】(イダテン)と申す。 移動速度も攻撃速度も……『速さ』については他の追随を許さん」
【毘沙門天】に【韋駄天】。 二つもの最強クラスの【能力】を見せられた紳士はただ、膝から崩れ落ちるしか出来なかった。
「では、吐いてもらおうか、御主の背後の組織……そして、その目的をな」
首元に大槍の刃、心臓を貫ける位置に黒揚羽を向けられ、紳士はただ己の知る範囲で答える事しか出来なかった。