コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: カワルミライ ( No.6 )
- 日時: 2016/02/07 20:49
- 名前: むつ (ID: HSAwT2Pg)
私のその質問に功さんは答えた。
「謝りたいと思ったからさ。それ以外に理由はない。あ、あとお嬢ちゃんも、もう謝んなくていいよ」
そう言っている功さんは少しさっきよりも表情が明るくなったように思えた。なぜだろう。
「そうですか・・・・・・。じゃあ、気を取り直して依頼を実行します」
「そうか。お願いするよ」
功さんは顔つきを見るに決意を決めたようだった。けど、ちょっとやっておかないといけないことがある。
「あと、その前に」
私を見て功さんはとぼけたように言う。
「ん? なんだね」
「料金をお支払いください。税込みで16000円」
コレをやらなかったら商売にはならない。別に、決して、忘れていたわけではない。
「結構高値だな」
功さんは顔をしかめる。けど私は平然と、淡々と悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「安いくらいでしょ? 未来を変えられるぐらいですから」
「まあ、それもそうか」
功さんは納得してくれた。そして財布からきっちり16000円出して私のほうに差し出した。
「はい。どうぞ」
私はそれを受け取る。
「確かに16000円いただきました。それじゃあ早速・・・」「ちょっとまってくれ」
依頼を実行しようとした私を功さんが止めた。
「なんですか?」
私は聞く。そして功さんは言った。やさしく。
「一つだけ聞きたいことがある」
「なんでしょうか?」
「ここの名前は、『カワルミライ』といったな」
「はい」
私は相槌を入れる。
「なぜ、変わる未来なんだ? 未来を変えることもここでは受けてるが過去を変えることも受けたまっている。なのに、何故・・・・・・?」
功さんは本当に気になっているようなので私はさっきも同じようなことを言ったような気もするが答えた。
「それは簡単な事です。過去を変えれば、未来が変わる。未来を変えれば未来が変わる。つまりどっちを行っても未来を変えることになります。だから『カワルミライ』なんです」
と。それを聞いて功さんは少し微笑んだ。納得し、腑に落ちたようだ。
「そうか。すっきりしたよ。ありがとう」
「・・・・・・。もう、聞きたいことはありませんね」
「ああ」
功さんは優しく微笑む。とても暖かい笑みだ。。もう思い残すことがない、という意味がそこには込められていた。その反応を見て私は微笑んだ。
「それでは依頼を実行いたします。では、功さんは目を閉じてください」
功さんは目を閉じる。
「こうか?」
「はい。それでいいです」
功さんは目を閉じながら優しく
「神楽ちゃん」
と言った。
「!!」
私はさっきまで私のことを功さんは『お嬢ちゃん』と呼んでいたのに対して『神楽ちゃん』と呼ばれたことに驚いた。
「なんですか?」
「ありがとう」
そう一言、功さんは笑いながら私に告げた。
「!! ・・・・・・どういたしまして。それでは・・・・・・」
功さんは目を瞑っているから私は今でどういう顔をしているかわからないと思うけど、でも、笑顔で見送ってあげたかった。
だから、泣いている事を悟られないように、笑顔を作って、出来るだけ、明るい声で私は言った。
「お達者で」
「ああ、神楽ちゃんも元気でね」
功さんは優しい声でそう答えてくれた。そして、その言葉を最後に功さんの体は透明になり、消えていった。私は、功さんが消えていったのを見ると涙を飲みながらこういった。
「・・・・・・はい」
少し沈黙の時間が訪れる。
「・・・・・・。行っちゃった・・・・・・。えーっと——新聞新聞」
私は涙を拭くことを後回しにして1ヶ月前の新聞を捜す。
「あった。えっと・・・・・・」
私は新聞の中身を眼を皿のようにしてみる。そして見つけた。小さな小さな記事。そこには、『ドラッグ引用で暴走か 死者0名、軽傷者3名』とかかれていた。
「死者0名・・・。てことは・・・! 助かったんだ! 2人とも。生き延びれたんだ! 成功した! よかった・・・・・・。よかったよおおおおおおお」
その後、私は号泣した。多分1時間ぐらいは泣いていたと思う。でも、それほど不安だったんだ。怖かったんだ。でも、今回はすべてが上手くいった。
泣き止んだあと自分の顔を洗ってからまたその後新聞の記事をじっくり見た。
記事の内容をまとめるとある倉庫にとある不良グループが押しかけてきてたまたまそこが功さんと徹さんがいつも工業製品などを保管していた倉庫でたまたま2人が作業中だったらしい。そこにドラッグを吸っていかれた人たちが押しかけてきて暴走。しかしなんとか軽傷を負ったものの、その場に死者を出さないですんだということだ。
そして、功さんはある会社の社長さんだったのだ。そして徹さんは功さんに職なしのところを拾われた会社員。とするとあの功さんの周りにいた人たちは護衛の人となる。すべての辻褄があった。
「そうなんだ・・・・・・。あーでも、もう一度功さんと徹さんに会いたいな・・・・・・。むこうは私の顔すら忘れちゃってると思うけど。でも会って言いたい。功さんと徹さん暴力団と勘違いしてごめんなさいって!」
私の顔にはもう涙は流れていなかった。そして私は時計を見た。7時もう夜だ。
「あ・・・・・・。看板変えなくちゃ。もう今日は閉店だ」
そう言って私は玄関に向かった。そして外に出て扉にかかっている看板を反対にした。そこにはこう書かれてある。
《【カワルミライ】今日はおしまい!また明日どうぞ!》
と。また明日も未来を変えるためにお客さんはやってくる。そして私はそのお客さんに向かって思うんだ。矛盾していると思うけど、こんな店を開いている人間の言えることじゃないと思うけれど、思うんだ。
未来なんて変えなくても意外と人生は楽しいよ。