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- Re: 気まま自由な短編小説 『イベント期間中!』 ( No.141 )
- 日時: 2016/04/23 08:30
- 名前: こん (ID: aMCX1RlF)
お題:嘘つきな彼氏 (詩歌 さん)
第23話「嘘つきな彼氏」
「帰ろ、幸太。」
「…ごめん。用事あるから先帰って。」
これで三日目だ。
なんだか私は幸太に避けられている。
「何かしたかな。」
親友に相談してみる。
「んー。なんだろうね。」
あまり重く考えてくれない。
そりゃあそうだ。
私と幸太は別に付き合っているわけではないし。
「まあ、いつまでも幼なじみ同士ベタベタするのが嫌なんじゃない。」
まあ、一理ある。
でもさ、なんで今更?
中学3年の夏にもなって今更?
ずっと一緒に登下校してたじゃない。
「…まあ、いいか。」
幸太にも思春期が来たのだろう。
ならば私は見守るのみか。
「でもちょっと寂しいな。」
「そのうち慣れるって。」
うん、そうだね。
きっとすぐに慣れるだろう。
………。
ううううう。
「慣れない慣れない慣れない!!」
「うるさいな、もう。何?」
「慣れない!」
「それはわかった。で、何が。」
一週間経っても、二週間経っても、幸太と一緒に登下校しない生活に慣れない。
それどころか、どんどんモヤモヤした気持ちになってきた。
「やっぱ、無理だよ!幼稚園の時から染み付いた習性を取り去るなんてさ!」
私がそう叫ぶと、親友は驚いた顔をした。
「え、なに。幸太のこと、恋愛対象外じゃなかったの?」
その言葉で、私はきょとんとする。
「幸太のことは恋愛対象外だよ。」
親友は1つ、ため息をついた。
「ああ、もう。めんどくさいな。」
「…なにが?」
「あのね。」
親友が真剣な顔をする。
「一緒に登下校できなくてモヤモヤする、ってのは、慣れないからじゃないよ。」
「え、じゃあなに。」
親友はまた1つ、ため息をついて。
「幸太のことが好きなんだよ。」
生まれた時から家が隣で、ずっと一緒に育ってきた。
恋愛対象として意識なんかしたことはないけど、
私は彼と一緒なのが当たり前だと思っていた。
これは、恋なのだろうか。
「ねえ、一緒に帰ろうよ。」
幸太に避けられて3週間。
久しぶりに誘ってみたが、
「ごめん、用事。」
今日もまた、彼は用事があるらしい。
「なんの用事?」
「なんだっていいじゃん。」
幸太は教室を出て、歩き出す。
「待ってよ。」
「ついてくんなよ。」
ずんずんずんずん、歩いていく。
幸太は1度も振り返らない。
階段を上って、廊下を歩いて、また階段を上っていく。
そうして。
「おい、ついてくんなって。」
屋上の扉の前に来た時、ようやく振り返った。
「だって、一緒に帰ろうと思って。」
「だから、用事があるんだって。」
扉を開け、外に出る。
心地よい風が吹いている。
「用事用事って、何の用事なの。」
「色々だよ。」
幸太はフェンスのところに行き、グラウンドを眺める。
「幸太さ、私のこと避けてる?」
私は彼の背中に問いかける。
でも幸太は応えない。
「私と一緒に登校したり下校したりするのが嫌になっただけ?」
一瞬の間があく。
私は彼に否定して欲しかった。
「そうだよ。」
はっきり、聞こえた。
「そ、うなんだ。」
そんなにはっきりと言われるなんて予想もしてなかった。
「んなわけないじゃん」とか言って笑ってくれるかと思ったのに。
「……。」
なんだかとても悲しくなって来た。
「……。」
幸太は私が嫌なんだ。
いつ嫌になったんだろう。
気が付かなかった。
「…おい、、…え。」
幸太は振り返り、私の顔を見て驚く。
「おま…なんで泣いてんだよ。」
自分でもよか分からない。
なんで私は泣いているのだろう。
悲しいから?
なぜ?
幸太に避けられているから?
どうして?
幸太だから?
え、なんで?
私、
幸太のこと、好きなんだ。
気がつかなかった。
気がつくのが遅かった。
気づいた時には失恋…か。
「おい、なんで泣いてんだよ…。」
幸太はさすがにオロオロして、私のそばにくる。
「……。」
私は幸太の顔をじっと見つめた。
「私、幸太が好きだったみたい。」
ぽつり、と言うと、幸太は目を見開いた。
「え。」
私は笑って背を向けた。
もう、帰ろう。
これ以上一緒にいたら、悲しくなるだけだ。
「じゃ。」
そう言って、1歩踏み出した。
「…。」
けれど、次の1歩は踏み出せなかった。
「…なに。」
幸太の手が、がっしりと私の腕をつかんでいた。
「…んだよ。」
幸太がうつむいて、つぶやく。
「え?」
私はよくわからなくて、幸太の顔を見つめる。
すると、彼はぱっと顔を上げた。
「お前、俺のことは恋愛対象外じゃなかったのかよ!」
「へ。」
「だから俺、一緒にいるのがつらくてやめたんだよ!」
「え。」
「…そしたらなんなんだよ、好きだとか。」
「…。」
そこで一瞬間を置いてから。
「…俺の方が、好きって気持ち大きいから。」
「…え?」
「お前が俺を好きなのより、俺がお前を好きな方が大きいから。」
そして彼は私の腕を引っ張り、抱きしめた。
え。
なに。
じゃあ、これからも一緒にいられるの?
やっぱり、
私といたくないなんて、
嘘だったんじゃない。
私の好きな、
嘘つきな彼氏。
《作者コメント》
またまたずいぶん遅くなってしまいました…。
本当に申し訳ございません。
詩歌さん、お題ありがとうございました!!