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- Re: 気まま自由な短編小説 『お題募集中!』 ( No.21 )
- 日時: 2016/02/16 12:27
- 名前: こん (ID: phd3C.MK)
お題:忘れられない、青春 (ルカ さん)
第5話「忘れられない、夏休み」
誰にだって、
忘れられないものがある。
だから
僕にだって、
あの夏は忘れられないんだ。
「おおーい!」
聞きなれた声がして振り向くと、隆が走ってこっちにやってくるのが見えた。
「 あ、隆じゃん。」
「逃げろ、逃げろ。」
「あ、おい!なんで逃げんだよ!」
俺ら3人は面白がって走り出す。
「あ、瞳ちゃんじゃん。」
「ほんとだ。」
「瞳ちゃーん!おっはよー!」
前方にいた女子が振り返る。
「おはよう。浅野くん、高野くん、安田くん。」
俺らのクラスのマドンナ、大野瞳はニコッと笑って僕らが追いつくのを待ってくれた。
「今日もいい天気だねー。」
「いい天気過ぎて暑い、暑い。」
「教室涼しくなってっかなー。」
「そうだねー。あ、前田くんおはよう。」
瞳ちゃんが振り返る。
隆が追いついた。
「はよっす。…てめえら、俺にどんだけ走らすんだよ。あー、あっぢい。」
隆は汗だくだった。
俺たちは笑う。
夏休みの、幕開けだった。
中高一貫生活最後の文化祭。
俺ら2-Bは映画を撮ることにした。
主演はもちろん瞳ちゃん。
青春もので、恋愛要素も混じってる。
瞳ちゃんの相手役は、まあ外見重視で隆に決まった。
今日から夏休み最後の日まで、毎日ではさすがにないが、結構な日数かけて撮影する。
「じゃあ、まずシーン1からいきまーす。」
「今日の大道具係りはこっちきてー。」
みんな張り切ってる。
そりゃそうだ。
今日は大道具係りである俺も、張り切ってる。
「なあ、ヤス。」
浅野大地も大道具係りだった。
「何、大地。」
「俺さ、終業式の日にね、瞳ちゃんに好きな人いるかって聞いたんだよ。」
「えっ。」
思わず手を止める。
「で、なんて言ったと思う?」
「じらさないでさっさと言えよ。」
「それがさー。」
「おう。」
「いるって。」
「えっ。」
「しかも、俺ら4人の誰からしい。」
「なんだとっ。」
「ちょっとー!安田、浅野ー!しゃべってばっかりじゃなくて手を動かして!」
少し離れたところにいた女子に注意された。
「はいはい。」
「すみませんねー。」
とりあえず手を動かす。
「やっぱり隆かなぁ。」
大地がつぶやく。
浅野大地、高野航平、前田隆、んで俺、安田圭斗。
顔でいったらやっぱり隆だ。
「頭でいったらタカじゃない?」
俺が言う。
「まあ、そうだな。」
大地はニッと笑う。
「スポーツでいったら俺かヤスだな。」
大地はバスケ部、俺はサッカー部のエースだった。
「まあな。」
結局誰だかわからない。
「まあ、俺だったとしても、恨むなよ。」
大地が手を動かしながら言う。
「そっちこそ。」
「…いや、恨むだろ、普通に。」
「んなの、こっちだって。」
「あれだな。」
大地が手を止めてこっちを向く。
「瞳ちゃんに告られたヤツは一カ月間宿題係りな。これでチャラ。」
「あ、それいいな。決まり。」
俺も手を止めた時、
「いい加減にしてよ。そこ2人。時間ないんだから、手を動かして!」
またまた女子に怒られた。
撮影は少しの遅れはあるものの、そこそこ順調だった。
「おい、ヤス聞いたか?」
夏休みがそろそろ中盤を迎える時、タカが鼻を膨らませて廊下で休憩中の俺のところにきた。
「なに。どした。」
「夏休み最終日、撮影終わったら、みんなで花火大会行こうって。」
「へえー、まじで。」
俺が軽く返すと、タカは真面目な顔で言った。
「お前、わかってんのか。」
「なにが。」
「女子、全員浴衣着るって。」
「…えっ。まじでっ!?」
俺がそう反応すると、タカは満足そうに笑った。
「まじだよ。…ただし、撮影終わったら、な。」
「うわっ、えー、まじか。…休憩してる場合じゃないじゃん。」
俺は立ち上がった。
タカは座ったまま俺を見上げる。
「だからさ、あそこで寝てる奴らも起こしてきて。」
「え。」
タカの指さす方を見ると、隣の教室の床に転がって寝ている大地と隆がいた。
「おーい、お前ら!起きろおお!」
俺は2人の脇腹をくすぐりに行った。
夏休み最終日。
午前9時。
「お、お、」
「終わったあああああ!!」
おおおおお!
クラス中に喜びと達成感が溢れる。
「じゃ、じゃあ、花火大会にみんなで行って、その後カラオケで打ち上げバーティーね!」
クラス委員が仕切る。
「明日、始業式どころじゃねぇな。」
大地が笑う。
「まあ、いいんじゃん?俺ら夏休み中ずっと頑張ってたし。」
隆も笑う。
「いいのかよ。」
俺とタカも笑った。
ヒュー
ドドーン!
パラパラ
空に綺麗な花が咲く。
僕らは少し特別な気持ちで見つめていた。
カラオケに移動するとき。
「あ。」
「どした、ヤス。」
「やっべえ。さっきいたベンチにケータイ忘れた。」
「まじかよ。」
「やばいじゃん。」
「ごめん、先にカラオケ行ってて。」
「おう。大丈夫か?」
「わかんね。とりあえず行ってくるわ。」
何やってんだか、自分。
人混みを逆流し、さっき花火を見ていたときのベンチに戻った。
「あ、うわー、あったー。」
俺の携帯は、ベンチに取り残されたままだった。
「良かった。」
ベンチに座って大地に電話する。
「あった。」
『おーう、良かったじゃん。すぐ来いよな。』
「おう。」
電話を切る。
ベンチから立ち上がろうとしたとき。
「携帯、あって良かったね。」
そう声が聞こえた。
「…。」
振り返ると、瞳ちゃんが立っていた。
「あれ、どした?」
瞳ちゃんは俺の隣にきて、座った。
「安田くんが戻って行くの見えたから、追っかけてきた。」
「…。」
浴衣姿の瞳ちゃんはいつもに増して綺麗だ。
瞳ちゃんが前を見ているので、俺も前を向いた。
「話したいことがあったの。」
「…話したいこと?」
どくん。
心臓が脈打つ。
「俺に?」
なんとか平常心を保つ。
「そう。」
「ふうん。」
ダメだぞ、俺。
勘違いしちゃ。
「なんの話?」
笑ってそう聞くと、瞳ちゃんは真面目な顔で俺の方を向いた。
「安田くんて好きな子いるの?」
「え。」
結構顔、近い。
「あ、えーと。」
「いるの?」
耐えられず、前に顔を向ける。
「…まあ、あれだな。うちのクラスの彼女なしはみーんな瞳ちゃんが好きだよ。」
俺はてきとうにそう言ったが、瞳ちゃんは俺の方を見たままだ。
「安田くんも?」
「…え、あー、まあ。」
「本当に?」
「…う、うん。」
気まずい沈黙が流れた。
なんだ、これ。
少しして、瞳ちゃんが口を開いた。
「じゃあさ、安田くんの彼女になっちゃダメかな?」
「…え。」
思わず瞳ちゃんの方を見る。
瞳ちゃんはまっすぐに俺の目を見ていた。
「…本気で言ってる?」
「本気だよ。」
…。
…。
勘違いじゃない、よな?
本当に俺に言ってるよな?
「…いいよ。」
俺の心臓は破裂しそうで、そう答えるのがやっとだった。
「本当に?」
瞳ちゃんは頬を赤らめてそう聞いてくる。
「…本当に。」
俺もきっと顔赤いんだろうな。
「そっか。」
瞳ちゃんが笑う。
「うん。」
俺も笑う。
一カ月間宿題係りだな。
そう思った時、
瞳ちゃんは僕に抱きついた。
こうして高2の夏休みは幕を降ろしたのだった。
《作者コメント》
ルカさんからいただいたお題「忘れられない、青春」に沿って書きました。
どうでしょうか?
友情ものにしようと思ってたのに、なぜか恋愛ものに流れ込むっていう…。
ルカさん!
お題ありがとうございました!
また良かったらお題ください。
よろしくお願いします!!