コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 気まま自由な短編小説 『お題募集中!』 ( No.26 )
- 日時: 2016/02/17 19:09
- 名前: こん (ID: kwjWR4CH)
お題:バレンタインの次の日の相手の行動 (火野カフカ さん)
第7話「アフターバレンタイン」
「うーん。」
かれこれ30分。
俺は自分の部屋の椅子に座って考えを巡らせていた。
「うううーん。」
机の上に置かれた、箱を見つめ、唸っていると。
「お兄ちゃんうるさい。」
ずっと隣の部屋で兄の唸り声を聞いていたんであろう、1つ年下の妹が俺の部屋のドアを開けて顔を覗かせた。
「ずーと、唸ってるんだもん。どうしたの、あ。」
そこまで言って何かに気づいた妹は、ズカズカと俺のところまでやってきて、ヘッドロックをかけてきた。
「何々〜。バレンタインのチョコじゃ〜ん?誰からもらったんだよ、このリア充め〜。」
「いててて。いて。いてえよ!離せ!離れろ!」
妹は離れると、チョコの入った箱を持ち上げた。
「ふーん。手作りかあ。やるじゃん。」
「うるせえ。」
「で、誰から?」
「わからん。」
「は。」
「名前が書いてないんだよ。」
「…なんじゃそら。」
そうなのだ。
名前がないのだ。
朝、登校してきたら机の中に入っていた。
『吉野くんへ』と書いてあったので、俺宛で間違いはない。
一体誰からなのか。
家に帰ってからずっと考えていた。
「…てことなんだよ。」
「なるほどね。それでずっと唸ってたんだ。」
「まあな。」
妹は少し考えていたが、どうでもよくなったらしく、
「まあ明日、そのチョコの人、お兄ちゃんの顔色でも伺いにくるんじゃない?…じゃ、私戻るけど、もううるさくしないでよ。」
と言って自分の部屋に帰って行った。
「…はあ。」
やっぱり、家で考えたってわかんないか。
もういいや、明日学校行ったらまた考えよう。
次の日の朝。
2月15日。
遅刻だ。
「うわー、時計止まってんじゃん。」
すでに妹は学校へ、両親も共働きなので職場へ出かけた後だった。
「二時限目には間に合うかな…。」
急いで支度し、学校へ向かう。
高校は電車通学ではあるものの、比較的近いところにあった。
学校の最寄り駅からダッシュする。
二時限目に間に合うかどうかギリギリだった。
校門をくぐり、下駄箱で靴を履き替える。
下駄箱のところから階段の方に飛び出すと、
「うわっ!」
「きゃっ!」
大柄な人にぶつかって跳ね返された。
(…きゃっ?)
尻もちをついた後見上げると、角刈りの頭に、学ランの上からでもわかるゴリッゴリの大柄なマッチョの男が立っていた。
「あらっやだっ。よ、吉野くんっ。ご、ごめんなさいっ。」
「あ、いや、こちらこそすみません。」
明らかに上の学年の下駄箱から出てきたのになんで俺の名前を知っているのか、なんて疑問はまるで出てこなかった。
とりあえず、なんだかキャラの強い先輩とぶつかって、手を引かれて簡単に起こされた、ということだけわかった。
「あ、すみません、ありがとうございます。…本当にすみませんでした。」
俺は急いで頭を下げて、階段へ向かった。
ピンクと白のリボン
可愛らしい丸文字、
完成度の高いチョコ。
(ふわふわした感じの可愛い女の子、かなー。)
二時限目の授業は自習になっていた。
席についてチョコをくれた人のことを考える。
やっぱり自分好みの女の子だと嬉しいよなぁ、とか思ってしまう。
(同じクラスだったりとか…。)
クラス中を見回してみるが、やっぱりわからなかった。
「吉野、おはー。遅刻じゃん。どうした。」
「おう、木村。時計止まっててアラーム鳴らなかった。」
「うわー。」
2つ後ろの席の木村が俺の席の横にやってくる。
「俺さ、わかったよ。昨日吉野にチョコくれた人。」
「ふーん。…ん、えっ。まじ?」
木村を見ると、ニヤッと笑っていた。
「まじまじ。聞きたい?」
「おう。」
「三年の先輩で、豪田原先輩。」
「ごう…だわら?」
「朝、吉野の席のとこに来てたの見たって女子が他のクラスにいた。」
「ふうん。どういう人?」
「…それは俺もわかんね。タイミング悪くて聞けなかった。」
「そっか。ありがとな。…にしても俺、2つ上の先輩とは思わなかったなー。」
「それな。俺もびっくりした。」
俺と木村はその時間中、ずっと豪田原先輩の想像をしていた。
立てカールの巻き髪で、ちょっと強気な美人。
そういうところで決着がついた。
(強め美人かあ。いいかもなー。)
昼休み。
木村とご飯を食べている。
食べ終わったら、豪田原先輩を見たと言っていた女子に話を聞きに行くことにしていた。
「くそぉ。いいなー。俺も美人の先輩からチョコもらいてー。」
「まあまあ、まだ美人と決まったわけじゃないんだから、落ち着け。」
「なんだよ。勝ち誇った顔で。くそー。あ、そうだ。今度お前の妹紹介しろよ。可愛いらしいじゃん。今回のお礼にさー。」
「うわー、あんなゴリラが可愛い?どこ情報だよ、それ。」
そんなことを話していると。
「なあなあ、なんかすげえごっつい人がこっち見てんだけど。」
木村がそう言ってきた。
「ごっつい人?」
振り返る。
朝下駄箱のところでぶつかった先輩がドアのところに顔を出していた。
「あの、誰か呼びましょうか?」
とクラスの人が聞くと、
「あら、いいのよ。おかまいなく。ありがとねー。」
と言っていた。
「わー、すげえキャラ濃い人だなー。うちの学校にいたんだ、ああいう人。」
「な。」
とりあえず前に向き直る。
木村はまた、俺の家のゴリラについて話始めた。
しばらくして、また木村が言う。
「…あの先輩まだいるよ。」
「…まじ?」
「おう。…あ、振り返んな。」
「なんで。」
「さっきから思ってたんだけどさー。」
「ん?」
「あの先輩、吉野のこと見てるよな。」
「えっ。」
「…いや、ホント。」
「…。」
さっきぶつかったから怒っているのかな。
ここは謝りに行った方が。
「…いや、怒ってるって感じじゃねえよ。」
「本当に?」
「おう。なんか微笑んでるもん。」
「…ごめん、そっちの方が怖い。」
俺と木村がずっと小声で喋っていると。
廊下の向こうから声がした。
「あ、豪田原先輩!」
ご、豪田原!?
俺と木村は瞬時に廊下へ目を向ける。
廊下の声に応えたのは。
「あらやだっ。なっちゃんじゃな〜い。」
あのごっつい先輩だった。
「…。」
「…。」
俺と木村は開いた口が塞がらなかった。
「…。」
「…。」
数秒がして。
「…は、はは。」
開いたままの木村の口から笑いが起こる。
「はははははっ。はーっはっはっはっ。ははははは!」
「おい、何笑ってんだよ。」
俺はやっと口が塞がった。
「ははっ!だっ、だって!ひーっ。腹いてえ。わはははは。」
「おいっ!」
少し待つと、ようやく笑いがおさまった木村が涙を拭いた。
「…いや、お前が昨日からずっと会いたかった人じゃん。良かったな。」
「…。」
木村はお茶を飲む。
「まあ、ちょっと予想外だったからびっくりしたけど、まあいいんじゃね。」
「え、待て。いいって、何が。何が!」
「今の世の中、だいぶ愛に性別は関係なくなってきてるし。まあ、人に好かれるって良いことじゃん?」
木村はにっこり笑う。
「…まあ、そうだけど。」
振り返る。
頬をピンクに染めた豪田原先輩と目が合った。
《作者コメント》
火野カフカさんよりいただいたお題「バレンタインの次の日の相手の行動」に沿って書きました!
吉野くんと豪田原がこの後どういう展開を迎えるのか…?
皆様のご想像にお任せします^_^
もしリクエストがあれば続き書きます。
皆様からのお題、心よりお待ち申し上げております!
カフカへ
お題ありがとう!!
今回の話はどうでしょう?
またよかったらお題くださいな(・ω・)ノ