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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 「 ——さあ、この手をとって。 」 ( No.1 )
- 日時: 2016/02/19 20:16
- 名前: あめ。 ◆oc/0fKPs3I (ID: 3UdJFDb4)
「天花寺、蒼葉!」
……————いったい、何事だ。
驚きのあまり目を見開いて、ガラッと開かれた教室のドアを見つめる。そこにいたのは、向かって右側に赤色のメッシュを入れた、黒縁眼鏡が特徴のイケメン様だった。
「おっ、お前? 事情は後で話すから、とりあえず来て」
語尾に星が付きそうなほど軽快な口調でそう言われて、戸惑う暇もなく腕を引っ張られて教室を出る。……いや、ひきずられた。抗議の声を上げようとしたけれど、眼鏡イケメン様の赤いネクタイを見てギョッとする。
(ささ、3年生……)
駄目だ、これは逆らってはいけない上級生。喉まで出かけた言葉を抑えて、されるがままに引きずられていく。
猛然とダッシュする私たちにすごい量の視線が集まっているけれど、眼鏡イケメン様改め、先輩はそんな視線を気にすることなく、階段を駆け上がった。でも、普段運動しない私に3階分の階段は辛くて、ゼーハー言いながら先輩に声を掛けた。
「せせ、先輩っ、何のようでしょうか……っ!?」
私は、先輩の名前も目的も知らされずに連れてこられた。疑問をぶつけてみたものの、先輩は口を開かない。そのまま走り続けて「やべえ死ぬ」と思い始めた頃、先輩は歩を緩めた。そして、ある教室の前に立つと、にっこりと私に向かって笑みを作った。
——「生徒指導室」
プレートを見上げると、確かにそう書いてあった。
は? 私、何か指導されるようなことしたのか。全く持って心当たりはないのだが、とても不安である。顔を引きつらせていると、先輩は取っ手に手を掛けて、また私に微笑んだ。
この人の笑顔は、全てを照らす太陽のような笑みだと思った。
「俺、宇多森 焔。よろしく、蒼葉ちゃん!」
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1章 : 出会いとはじまり。
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