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Re: そんな君に、ずっと好きだと叫びたい。 ( No.5 )
日時: 2016/03/07 19:02
名前: スプリング (ID: .wPT1L2r)

▼#1


薄紅色の花びらがひらひらと舞い散る春。やわらかな陽射しと、淡い色の空によく似合う、桜の花びらが踊るように散っていた。

そんな桜の様子に見惚れる、少女の姿が一つ──。
私だ。

「わくわくするなぁ」

今日は県立高校の入学式。つまり、その高校に受かった、私──月影葉子(つきかげ ようこ)の入学式だ。

踊り出してしまうほど楽しそうな桜の姿を見ていると、たまたま目にしたこっちまで気分が上がってくる。
正直、一人で挑む入学式は不安だったけれど、桜のおかげでこわばった気持ちがほぐれた。

“一人で挑む”というのは、親が出席しないということだ。
なぜ親が欠席なのかというと、今現在、両親は海外にいるからだ。といっても、親子別々で暮らしているとか、そういう複雑な事情があるわけではない。

ただの手違いだ。
私のドジな両親が、まさか娘の高校の入学式があるなんて知らずに、海外旅行を計画したのだ。

しかも愛娘の入学式よりも旅行を優先した。結婚記念日だかなんだか知らないけれど、我が子のめでたい行事に勝るほど大切な用事だとは到底思えない。

「最後は、『試練だ』なんて言い訳してたし……」

そのせいで、むだな緊張をするはめになった。
帰ってきたら、くどくど責め立ててやるんだから!

のほほんとした両親の顔を思い浮かべてこぶしを握っていたら、制服のポケットが小刻みに震えているのを感じた。

ケータイだ。

ぴんと来て、振動の根源を即座に取り出す。
直感は当たっていた。

高校の入学祝いに買ってもらったケータイ電話を、本来なら校則違反だけれど、今日だけ……とブレザーのポケットに忍ばせていたのだ。
そのケータイ電話が、メールを受信したとサインを送ってきたようだった。

メールはダイレクトメールで、特に大したことではなかった。それよりも、なにげなく確認した時間の方が重要だった。

「やっば、遅刻しちゃう!」

せっかく早めに家を出たのに、ぎりぎりで高校にたどり着いては全く意味がない。

少し肩に触れるくらいのストレートの黒髪が乱れるほど勢いよく身をひるがえすと、私は急いで目的の高校に向かった。