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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 観覧車。【短編集】リクコメ募集中】 ( No.2 )
- 日時: 2016/03/07 15:20
- 名前: 湯呑ゆざめ (ID: HT/LCIMm)
≫春とテストとほつれたリボン
指に制服リボンのほつれた糸をくるくると巻きつける。
外を見れば心地よい春風がシャツの襟元を撫ぜていく。
夏のぎらぎらとした日光とは違うふわっとしたベールのような、
そんな日光が気持ちよかった。
隣をちら、と視れば寝息を立てる幼馴染の姿。規則正しく寝息が漏れ聞こえる。
ただいま、私澪緒は追試を受けている。教師は欠伸混じりに少し前に廊下へ行った。
電話でもしているのだろう。さっきからいつもとは大違いで弾んだ教師の声が時々聞こえる。まあ、春休みだもんなあ…
そして、恥ずかしながら私のテスト用紙は空欄のままだ。だって仕方ないじゃん、隣に好きな人がいるんだもん!
また、盗み見すると柔らかそうな日に透けた髪がきれいで。
呼吸に合わせて短く震える睫毛が黄昏色に縁どられていて。
その時、そっと舞い込んだ花びらが君の唇に落ちたから。
目が離せなくて。
取ってあげるだけと言訳しながら君に顔を近づけた。
「ばーか」
目を薄く開き、掠れた声で君は囁く。呆けた私の腕を引き寄せた。
二人の距離は0センチ。
唇を離すと君は柔らかく笑ってまた、机に突っ伏した。
私の心がほつれるのも君のせいだし、
私の心が絡まるのも君のせいだ。
拗ねたようにほつれた糸を指に巻きつけて、運命の糸が君に繋がってたらいいな、なんて馬鹿みたい。
テストの空欄も、この自覚しかけた気持ちもぜんぶぜんぶ
春のイタズラだろうか。
end
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