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Re: 観覧車】短編集。(復活宣言!) ( No.62 )
日時: 2016/04/09 16:12
名前: 湯呑ゆざめ (ID: HT/LCIMm)

こんちゃん≫そうだったのねWまた、よろしくね^^

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≫通話ボタンと夜風に溶けた微熱。




ふと、少しあいた窓から風が流れ込み、私はページを捲る手を止め
手を擦り合わせる。もう、秋か。時計を見ればもう少しで、日付が変わるようだ。今度こそ、本に栞を挟み窓を閉めようとした、


その時、耳に携帯の着信音が流れ出した。友達と電話はするけどこんな
時間にはかけてこない。

訝しみながら液晶画面を見ると、私は固まった。
心臓がわざとらしいくらいにドクン、と脈打ち、頬が熱くて、
熱を出した時みたいにぼーっとした。

一年前、高1の時に申し訳程度に交換した番号が、密かに想いつづけてた
彼の名前が映し出されていた。

手が震える、ダメだよこんな事しちゃ。絶対ないのに、ないはずなのに
バカな私は期待しちゃうよ。
彼女がいるのに、私は絶対気づいちゃいけなかったのに。

あの日、君が私に笑顔を向けてくれた時から、ずっとずっと胸が
痛くて、切ないの。
意を決して、通話ボタンを押す。そうだ、連絡網かもしれない。
自分に言い聞かせる。間違って期待しないように。

「も、もしもし」
ほんの少し上ずった私の声。
「あー、うん。」
「どうしたの?」
何で素直になれないの。

「や、なんて言うか…」
声が一瞬消え、少しの間の後に柔らかくふ、と笑う音が
ノイズから漏れ出した。


あ、胸がチクッてした。

「なんか、声が聴きたくて。」
ちょっと照れたように言葉が紡がれた瞬間、体温が上がる。
嬉しくて嬉しくて、つい口元が緩む。
しめかけた、窓を開けて今風を君は感じているのかな、って。
ほんの少し、素直になってみたり。



「うん。私も今聞きたかった。」
頬の熱はひやりとした風に晒しても冷めなかったけど、
今は何だかそれが嬉しい。


君の声が、私の声と重なる日まで。


end