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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 観覧車】短編集。参照600突破記念祭り♪ ( No.65 )
- 日時: 2016/04/23 16:06
- 名前: 湯呑ゆざめ (ID: ovLely7v)
≫好きです。たったそれだけでどうしてこんなに辛いの。
校舎裏から見えた二つの人影。
私の好きな人と、私の好きな親友の見飽きた姿。
私は、耳を澄ませて言葉を待つ。「あ、あ、のね」
緊張し震えた親友の声音にあの人はハッと息を呑む。
それから、ほんの少しの間があって、「好きです。」か細く聞こえる。
きっと、頬を染めているんだろう。私と違って素直なあの子は。
ひねくれた考えに自己嫌悪。また、間があってあの人の声。
いつもとは違う柔らかな声に正解を導き出す。「うん。俺も。」
耳を塞ぎたい衝動に駆られるけど、脳がそれを許さない。
無理矢理でも、現実が焼きつく。網膜に。
「でも、あの子にどう言えばいいかな。嫌われたくないよ。」
控えめな声に、あの人も笑って返す。
「大丈夫だよ。もし何かあったら俺が助ける。」
真摯な声音にほぅ、と息をつくと安心したように
「かえろーか。」と言って私と逆方向の校門に向かう足音。
少し冷えた手をかじかんだように、こすりあわせる。
「寒いな。」
まだ冬は来ないはずなのに。一人寂しく呟いて、涙が溢れて頬を
流れ落ちていく。
好き、なんて気持ちで私のココロが冷たくなってく。
辛い。もう交わらない気持ち。
さよなら、初恋。
さよなら、私。
寒いな、もう一度呟いて駆け出した。
end
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