コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 恋愛物語 ( No.9 )
日時: 2016/03/14 06:57
名前: リュー (ID: 3z0HolQZ)

私もそう思って、少し哀れみの目でその人を見ていた。
するとその人は
「や、やてろって………そんな目でみんなよ………」
といって泣き真似をしだした。
そんなことにもかまわず、兄は
「茅夜、さっきいっとくからなー」
と言った。
「ま、待ってよ、お兄ちゃん!」
私は慌てて出ていこうとしたけど、入り口の近くでまだ泣き真似をしている兄の友達に
「お先に失礼します!」
と一礼して教室を出た。
教室の外と、廊下の気温は結構違って、まして今は冬なので、廊下はとても寒かった。
私は、制服のポケットに手を突っ込んで走ろうとした。
でも、ポケットのなかに何かがある。
それを取り出してみた。
それは


「チョコ?」

そう。チョコだった。
ここから、あまりさっきの教室は離れていない。
まだ、あの兄の友達はいる。
私は、教室の入り口にいって
「これ、チョコです!」
と、小さな一口サイズのチョコを投げて、その先輩に渡す。
先輩は
「んー?って、一月の三十日だよ?ちょっと早いけど、まぁ、ありがとなー」
と言って、チョコを鞄の中にしまった。
「文句言わないでくださいよー」
私は頬を膨らませていった。
そして、兄が待っていることを思いだし、慌てて玄関へと向かう。
そこには、兄と、兄に昨日告白した隣の家の幼馴染みである田山美樹さんがいた。
三樹お姉ちゃんとは、私も小さい頃から顔見知りだ。

Re: 恋愛物語 ( No.10 )
日時: 2016/03/14 17:12
名前: リュー (ID: 3z0HolQZ)

でも、さすがにこんな二人の空気の中に
「お兄ちゃん待ったー?あ、美樹お姉ちゃんだ!なにしてんのー?」
とか言って空気をぶち壊すことはできない。
私は二人が玄関から行くまで待とうとしたけど、お兄ちゃんが
「それにしても、茅夜のやつ遅いな………」
と言ったので、私はメールで
「ちょっと急用(;・∀・)先帰ってて(*´・ω・`)ノ」
と、慌てて送った。
すると、そのメールを読んだお兄ちゃんは
「先帰っててって………んじゃ、俺行くよ」
立ち去ろうとしたお兄ちゃんだけど、美樹お姉ちゃんが立ち上がって
「私も行く!いいでしょ?」
と言った。
お兄ちゃんは、少し顔を赤く染めて
「ま、一人じゃつまんないしな。行くぞ、美樹」
と言う。
美樹お姉ちゃんは嬉しそうに笑って、お兄ちゃんと手を繋ぎながら帰っていった。
私はその姿を見届けて、すれ違ったりするとヤバイから、お兄ちゃんが家につくまで学校にいようと決める。

Re: 恋愛物語 ( No.11 )
日時: 2016/03/14 21:43
名前: リュー (ID: 3z0HolQZ)

とりあえず、冷えないように手に息を吹き掛けながら、下駄箱の近くにあった室内用ベンチに腰を掛ける。
すると、隣に誰かが座ってきて、顔を見るとそれは、さっきチョコをあげた先輩だった。

Re: 恋愛物語 ( No.12 )
日時: 2016/03/15 19:59
名前: リュー (ID: 3z0HolQZ)

先輩は隣に座ると、私の頭をクシャッと撫でて
「偉いなー、渕東の妹ー。渕東と田山にきー使って、学校に残ってるとかさー。うん、偉いな、お前ー」
私は少しムスッとして
「渕東茅夜です………私の名前、渕東茅夜です!」
私のことを先輩が名前で呼ばないから、ついいってしまった。
すると先輩が
「茅夜な、茅夜。覚えとくよ。俺は片桐正土。よろしくなー、渕東の妹」
「茅夜ですって!」

Re: 恋愛物語 ( No.13 )
日時: 2016/03/16 19:35
名前: リュー (ID: 3z0HolQZ)

なんなのよー、人の名前で遊んで!
私が頬を膨らませていると、先輩が頬に手を当ててきて
「そんな顔してると、せっかくの可愛い顔が無駄だぞー!」
と言った。
私の顔はたぶん真っ赤だっただろう。
そのくらい、恥ずかしくて、もどかしくて、そして、嬉しかった。
すると先輩が
「もうそろそろ帰って良いんじゃないかー?俺も送ってくぞー、渕東の妹ー」
といったので、私は慌てて
「い、いえ、結構です!さ、さよなら!ま、また明日!!」
と、行って、走っていった。
雪が靴に染み込んでいくけど、そんなこと関係なしに走る。
(な、なんなのよ、あの、片桐って先輩!よくあんな恥ずかしいこと言える………お兄ちゃんにも言われたことないのに!)
その日から、私は片桐先輩のことを気にかけるようになった。


Re: 恋愛物語 ( No.14 )
日時: 2016/03/17 21:49
名前: リュー (ID: 3z0HolQZ)

何度見ても、何度見ても、同じ風に、ニカっと笑ってピースを返してくれる。
あの日から十日が立ち、二月九日になった。
それでも進展なしな関係。

Re: 恋愛物語 ( No.15 )
日時: 2016/03/18 18:57
名前: リュー (ID: 3c0JYUg8)

私は、そんな日が続いて、少しモヤモヤする。
(また二人っきりで話したいな)
そんなことを思いながら、ボーッと教室から、廊下を眺めていた。
すると、クラスメートの西光さんが
「チヤって好きな人いんの〜?」
と、唐突に聞いてきた。
私は思わず
「いないよ!」
と、口から出任せを言ったけど、西光さんは
「顔赤いよー、チヤ。いるんでしょ好きな人」
と言った。
確かに、いるけど………
でも、言うのは恥ずかしいし………
あぁ、穴があったら入りたいよ………
私はそのくらい恥ずかしかった。
だから、クラスの女の子が
「えんどうさーん、先輩が呼んでるよー!」
と言ったとき、すぐに
「うん、今行く!」
と言って、すぐに廊下に行ったのだ。

Re: 恋愛物語 ( No.16 )
日時: 2016/03/21 12:49
名前: リュー (ID: G/Xeytyg)

廊下にいたのはお兄ちゃん。
今朝、私の教科書と自分の教科書を間違えて持ってきてしまったらしく、返しに来たんだとか。
お兄ちゃんの隣には美樹おねえちゃんがいた。
やっぱ仲いいんだなあー、この二人。
「じゃーな、チヤ」
お兄ちゃんは振り向いて手を振り、自分の教室へと向かっていく。
「またねー、チヤちゃん」
美樹おねえちゃんもお兄ちゃんの後を追いながら、私に向かって手を振っていく。
そして少し進んだところへ行くと、私のほうへもどってきて
「さっき友達と好きな子の話、してたでしょ?チヤちゃん、好きな人いるんだー」
「い、いないよっ!………好きな人なんて………!」
私の顔は見る見るうちに赤くなっていくのが、私にもわかる。
「チヤちゃん」
美樹おねえちゃんが少し真剣な顔になり、ちょっとこっち来てと言わんばかりに、手招きをする。
私は美樹おねえちゃんのもとへ顔を寄せ、美樹おねえちゃんは私の耳元でささやいた。
それを聞いて私は決めたのだ。
「わかったよ、美樹おねえちゃん!私、頑張るから!」
私は笑顔で、大声でそう言った。
ここは廊下で、そんな大声を出すとみんな私に視線を集める。
私はハッとして、うつむいた。
恥ずかしい………

Re: 恋愛物語 ( No.17 )
日時: 2016/03/23 17:21
名前: リュー (ID: Yv1mgiz3)

私は、小さい頃から苦手だった。
勉強も、友達とコミュニケーションをとることも。
相手を気遣うことも、空気を読むことも。

そして、素直に気持ちを伝えることも、難しいことも。

私は、運動以外の全部が苦手だった。

でも、伝えたいです。
先輩………
最初は、単に『気になる』だったけど。
でも、たぶんこの気持ちは、この気持ちは………

いつの間にか『恋』に変わってたんだ。

私、ムズカシイのは苦手です。
だから、単純にでもいいですか?
『好きです』
って。
なんにも飾っていない言葉だけど。
でも、そんな『ブナン』な言葉を先輩に伝えたいです。
それが一番、私らしい気持ちだから。
単純な気持ちだから。



「先輩へ
先輩に用事があります。
放課後屋上へ来てください。
渕東の妹より」
そんなメールを、お兄ちゃん宛に送って、私は屋上へと向かった。


お兄ちゃんなら、わかってくれるはず。
先輩に、見せてくれるはず。
もし見せてくれていなくて、先輩が屋上に来てくれていなかったら、そのときは運がなかったと思って諦めよう。
そして、もし来てくれていたら───この気持ちを伝えよう。
そんなことを考えながら、私は屋上のドアの前についた。
「大丈夫。私ならできるはず、できるはず………」
右手を胸に当て、自分に言い聞かせる。
大丈夫、大丈夫………

ドアを思いっきり開ける。
怖くて、思わず目を閉じてしまっていた。
その閉じていた目を、ゆっくりと開ける。
そして、屋上には───
先輩がいた。
「あ、渕東の妹。おれのこと呼び出したろ?渕東宛にメールが来ててさ。渕東に見せてもらったんだよ。なんだー?用って」

Re: 恋愛物語 ( No.18 )
日時: 2016/03/23 17:43
名前: リュー (ID: Yv1mgiz3)

先輩は相変わらずいつもの調子だ。
「せ、先輩、その………あの、えっと………」
緊張で声がでない。
いや、声は出るんだけど、言葉がでない。
伝えなきゃ、『好きです』って。

Re: 恋愛物語 ( No.19 )
日時: 2016/03/23 17:59
名前: リュー (ID: Yv1mgiz3)

決めたんだから。
でも、なかなか言えない。
すると、先輩が
「お前の兄ちゃん───渕東、いいよなー。田山みたいな子が彼女で。ほんっと、羨ましいよなー」
と言った。
心なしか、先輩がいつもより焦っているように見える。
「どうしたんですか?急に」
訳のわかっていない私に、先輩が私の目を見ていった。
「いや、羨ましいじゃん?渕東たち。だから、俺も、彼女ほしいなーとか思ってさ………いや、だから………」
頭をかきながら、先輩は
「あー、もー!好きってどう言えばいいんだよ!」
と叫んだ。
「先輩………?」
先輩は、あっ!と口を手で塞ぐ。
先輩は焦っているようすだけど、私は反対に興奮していた。
嘘でしょ、嘘でしょ、嘘でしょ、嘘でしょ!
まさかこれ、夢?
ほっぺたをつねっても、ちゃんと痛みを感じた。
夢じゃないのか………
じゃあ、私の周りに誰かいるとか?
辺りを見回してみたけど、私と先輩以外に誰もいなかった。
やっぱ、いないよね……
じゃあ、さっきの

Re: 恋愛物語 ( No.20 )
日時: 2016/03/23 19:37
名前: リュー (ID: Yv1mgiz3)

じゃあ、さっきの『好きってどう言えばいいんだよ!』って言葉──遠回しな告白とも受け取れる言葉を、素直に、私に向かっての言葉だと思ってもいいんだよね?
「あ、っその、渕東の妹!さっき言ったことは、えっと、えっと………」
先輩は顔を真っ赤にしていった。
でも、吹っ切れたみたいに、
「あー、もう、じれってー!俺、チヤちゃんが好きなんだよ!そりゃー、会ってからたった三週間しかたってないけど、でも、好きなんだ!」
と言った。

Re: 恋愛物語 ( No.21 )
日時: 2016/03/23 19:56
名前: リュー (ID: Yv1mgiz3)

なんだ、先輩も私と一緒なんだ……
告白くらい、かっこいい言葉、言いたいけど、思い付かなくて。
私は先輩のことをもう一度よく見つめる。
先輩は、いつもより恥ずかしそうな、でも真剣な表情だ。
私はそんな表情の先輩に言った。
「先輩、ありがとうございます。私も───」
私はふぅーと、一呼吸して言った。
「ムズカシイのは、苦手なんです、私。だから、直球で伝えますね。素直に伝えますね、先輩に。私、先輩のこと大好きです!」
ニッコリと満面の笑みを浮かべて、私はちゃんと、言った。
普通の言葉でも、無難な言葉でも、それが私の言葉だから。
すると先輩は余裕に笑っていった。
「俺とおんなじようなこと言ってんじゃねーよ!パクんなよなー!」
「パクってないです!先輩とは『前振り』が違いました!」
「前振り以外は一緒だろ!」
「それでも、違うったら違うんです!」
屋上には私と先輩の声が響き渡った。
その夜、私は先輩にメールをした。
一応、相思相愛──恋人ってことなんだし。

Re.片桐先輩へ

件名 今日の感想

ムズカシイことは苦手です。
だけど簡単なことならわかります。
あなたに好きが伝えられて嬉しいです。

チヤより

単純コイゴコロ 終わり