コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ストライド・バンド!! ( No.10 )
- 日時: 2016/05/15 10:26
- 名前: Cookie House (ID: l.IjPRNe)
第四話 拒否
「八咲君!!」
気が付けば、私は大声を出して合わせを中断させていました。
ゴトリと鈍い音を立てて突然倒れた八咲君は、過呼吸気味に苦しそうに息をしています。
隣でエレキを弾いていた栄倉君が、丸まって横を向いていた八咲君の体を仰向けに直すと、顔は青白く今にも死にそうな病人を思わせました。
「なんだ、何故急に倒れたんだ!」
有馬先輩がポニーテールを振り乱しながらわけが分からないといった声色で駆け寄ります。
夏目先輩と村瀬君も少し遅れて駆け寄りました。
「何があったの」
村瀬君が冷静に話しかけます。
「なんか……っ、俺が歌い出したら急に倒れて……!」
顔面蒼白の栄倉君が必死に事情を説明しますが、慌て過ぎて何が言いたいのかまるで伝わってきません。
「他には思い当たることないの」
「思い当たること……い、いや、わかんねえ」
「ふーん、じゃあ栄倉の所為かもね」
村瀬君が冗談にならないような冗談をかまし、栄倉君が「俺っ?!俺の所為?!」と更に慌てふためきます。
一方の村瀬君はというと、肩を叩きながら「大丈夫ー?聞こえるー?」と冷静そのものに八咲君の意識確認をしていました。
やけに手馴れている村瀬君の手つき___実家はお医者さんか何かなのでしょうか___に皆も安心したのか、夏目先輩が立ち上がって「先生を呼んできます」と音楽室から遠く離れた保健室へ向けて駆け出しました。
「……それにしても、何故こんな風に……」
有馬先輩があごに手を当てて、一番の疑問を吐き出しました。
「アレルギーか何かでしょうか?ハウスダストとか」
私がそういうと、
「いや、その可能性は低いと思うよ」
と、八咲君が呼吸しやすいようにあごを持ち上げていた村瀬君が答えました。
「湿疹もかぶれも出ていないし、呼吸困難に陥ってはいるけど喉も腫れてないし」
続けて村瀬君が私に聞きました。
「八咲君、何か薬飲んでたりした?」
「いえ……特に何も」
「じゃあ持病の可能性も低いか」
本格的にお医者さんになり始めた村瀬君がつぶやく声を掻き消すように、バタバタと廊下から足音が聞こえました。
「先生、はぁっ、つれてきました!」
メガネのわりに運動は出来るのでしょう、夏目先輩が早くも帰還して、八咲君が連れて行かれます。
「……にしても、本当に何があったんでしょう……」
後に残ったのは、そんな疑問だけでした。