コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ストライド・バンド!! ( No.5 )
- 日時: 2016/05/05 12:47
- 名前: Cookie House (ID: l.IjPRNe)
プロローグ
星蘭学園高等学校 理事長室
二人の少年少女と一人の理事長が、その部屋に居た。
理事長は自分の座長椅子に、そこから机を挟んで二人の生徒が、存在していた。
生徒のうち一人は、この学校の放送部部長_____夏目勇。制服のネクタイと同色の赤い眼鏡をかけている、長身の生徒だった。
もうひとりは、同じく軽音部部長_____有馬詩織。腰までの黒髪が目を引く、女生徒にしては長身の生徒だった。
何故二人が呼び出されたのか。その理由は、この学校の校則に起因する。
「我が校の部活動は、現在三十二種類容認されています」
椅子を揺らして立ち上がった理事長は、グレーのスーツに身を包んで、髪をオールバックにしている。
「進学校である我が校にとって、生徒の自主性を伸ばす大きな糧となっている_____そこまではいい」
理事長が不意に後ろを振り返り、下りていたサンシェードを上げた。
五月晴れの眩い光が部屋全体を照らして、二人は日差しを避けるように額に手をやった。
「しかし、部活動の容認には条件がある。君達二人の所属する部活動は、それを通過できる状態ではない。_____何が言いたいのかは、我が校の聡明な生徒ならばもうわかるね?」
部活動という単語を部活と略さずいちいち部活動と言うあたり誠実な性格が伺えるが、その言葉一つ一つが冷ややかなオーラを纏っているようで、理事長という一人の男に近寄りがたい雰囲気を持たせていた。
「放送部及び軽音部は、今年度の部活動体験・入部期間で部員数が六人を超えなかった場合________」
「____________________廃部とする」
「下がっていい」と言われるころには、二人は唇を引き結んで俯いていた。
「失礼しました」
諦めたような感じもするその表情には悲しみや悔しさ、あるいは喪失感、いや、そのどれもだろう、いわゆる負の感情とかいうやつが浮き出ている。
バタリとドアを閉じて廊下に出ると、時刻は五時、初夏の柔らかい日差しが窓から差し込んでいた。
「なあ、夏目」
「何だ」
「提案があるんだが、乗らないか?」
突然突きつけられた『廃部』の二文字が二人の心を支配することはおそらく必至だろうが_____、沈んだ表情の夏目と対照的に、有馬は、男のような口調の黒髪の女生徒は、寧ろ希望すら浮かべてこう言った。
「放送部と軽音部で、_____しないか??」
この提案が、後々学校全体を、人の心をも変えることになるとは、このとき、まだ誰も予想だにしなかった。