コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 恋人ごっこ ( No.2 )
- 日時: 2016/04/20 18:31
- 名前: 川魚 (ID: .KVwyjA1)
#first contact
それは偶然の出来事だった。
たまたま、場所が同じでーー
たまたま、時間が同じでーー
偶然にも事は起きた。
偶然が偶然にも重なってーーまるで必然のように。
野球部の略し過ぎて擬音語みたいになってしまっている掛け声。バットとボールがぶつかる金属製の気持ちいい音が校舎の屋上に響く。
そんな青春の音のする放課後の屋上は人気な、いや、定番な告白スポットになっている。
そうして、今日も告白の場所となっている。
「翔太君が好きです! 私と付き合ってください!」
そういって彼女は顔を伏せた。ショートにした髪が前に揺れる。
柿原梨奈、隣のクラスの子で前に委員会で隣が彼女なので作業の傍らよく話す仲だ。
ちょっと振りにくい。
梨奈は今どんな顔をしているのだろうか。
顔色を窺おうとも、梨奈は顔を伏せているのでわからない。
ええい、乙坂翔太! しっかりしろ! 相手は本気なんだ。ならこっちもちゃんと答えるのが道理だ。
なんて自分に鼓舞して、はじめから用意してきた言葉をいう。
「ごめん、柿原"さん"とは付き合えない」
柿原さんが顔を上げ、目が合う。
口を開いたまま何かを言おうとしてる。
「そっか・・・・・・こめんね急に・・・・・・」
柿原さんはまた顔を伏せた。
「私、先に帰るね。じゃあね。しょ・・・・・・乙坂君」
柿原さんは走って校舎の中に消えた。
屋上に残った俺は帰ろうかと思ったがやめた。まだ柿原さんがいるかもしれない。鉢合わせでもしたら大変だ。
それに、自分がさっきしたこと。
道理だ、本気だ、なんだと言い訳して俺は相手を傷付けることを正当化した。
もっと相手を傷つけずに振る方法もあった。なのに、相手を傷付けるやり方を選んだ。
俺には恋をする権利なんてないにも等しい。
誰かに恋をするなと言われた訳ではない。
だけど、俺には人を幸せにすることができない。
自分が幸せになることが赦せない。赦してならない。
だから、俺には恋ができない。