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Re: 雨のち晴れの恋愛模様。 ( No.32 )
日時: 2016/07/11 15:16
名前: ももたん ◆hjAE94JkIU (ID: RKif8kSb)

雨の章 3『こいはかんたんにかなわない』

「ごめんね乃愛、一緒に帰れなくて…!」
「いいよいいよ、しょうがないし。じゃあね」
「うんっ、ほんとごめん。じゃあね!」

今日は、明里に急用が入ったため一人で帰る。
一人で帰るなんて、何か月ぶりだろう。
今まで、明里が休まない限りずっと一緒に帰っていたから、ちょっと変な感じだ。

話を聞いてもらいたかったから一緒に帰れないのは残念だけど、でも一人で考えて帰るのも、まあ、悪くない。

学校の門をくぐろうとすると、校庭からサッカーボールが転がってきた。

「すみませーん!って、あ。美月さん!ごめん、そのボールこっちに投げてもらってもいい!?」

校庭の真ん中から声をかけてきたのは、井上君だった。

「うん。投げるよー!」

えいっ、と両手でボールを思いっきり投げる。

「ありがとー!助かった!」
「がんばってねー!」

井上君は、こっちに向かって少し頭を下げる。
私はニコッと笑って、また門のほうを向こうとする。
が、それはできなかった。

校舎から井上君たちサッカー部の子のほうに向かって小走りで来るのは、水城先輩だった。
先輩は、「まだ練習してて!」と声をかけ、井上君を呼ぶ。

話している内容は聞こえなかったけれど、私は2人の笑顔に心が痛くなって、走って門をくぐった。



「はぁ、はぁ、はぁ…っ」

つ、疲れたー…!

学校から走って約5分、ついたのは家の近くの川。
近くにあった、日陰の下のベンチに座り込んで呼吸を落ち着かせる。
はぁ、はぁ、はぁ…はぁ。
やっと落ち着いた。

家に帰る?…いや、少しここで休んでからにしよう。

「恋は簡単に叶わないんだなぁ。…小説の通りだ」

ポツリとひとり呟く。
本当に小説の通り。恋なんて簡単に叶わない。
でもすべてが小説通りってわけじゃない。
小説は、この後奇跡が起きて、好きな子とくっつく。

けど現実はそうじゃない。
私の恋は、もうこれで終わり。続くとしても、片思い。
…終わりにするのは厳しいな。片思いにしよう。

気持ちの整理をつけたところで、声をかけられる。

「…愛」

声の主は、妹の愛だった。

「そーだよ!っていうか、お姉ちゃんこんなところでどーしたの?家、すぐそこじゃん」
「あーうん、ちょっと考え事してた。もう帰るけど」
「そーなの?じゃあ一緒に帰えろー!すぐ近くだけど」

へらっと笑って見せてくれる、可愛い妹。
笑顔は人を救うって、本当なんだ。

「うん、そうだね。帰ろっか。…すぐ近くだけど」
「そーだね、すぐ近く〜!」

妹は、どうやら「すぐ近く」というのにハマったらしい。
私からしたら意味不明だが、まあそんな妹もかわいい。

手をつないで、家に帰る。