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Re: 2人のダミー ( No.2 )
日時: 2016/04/30 08:36
名前: マル彦 (ID: 21zier3A)

【第二話、着物の添田とチャラい添田】


だだっ広い空間にポツリと取り残された二人の添田徹は、怪訝な顔をしながら頭を突き合わせて相談していた。

「私たち、何かしましたかね」

「変な電話でもかかってきたんじゃないっすか?」

着物の添田は腕を組む。
目を閉じて何かを考えるような素振りをしてから、


「突然ですが、あなたは『しりとり』というものをご存知でしょうか」
と、チャラい添田を見た。

「知ってますけど、何すか?」

「いや、何故か、無性にあなたと勝負したくなってしまって」

「まあ良く分かんないっすけど、よし、やりましょう」


何を思ったのか、二人は練習室の床に、向かい合わせで座り込んだ。

「いきますよ」

チャラい添田は頷く。

「しりとり」

「リス」

「スリ」

「りんご」

「ゴマすり」

「り、ばっかりっすね」

「まだ勝負は始まったばかりですよ」

「く……」

二人は姿勢を正座に変えた。

「どうぞ」

「……リキュール」

「瑠璃」

「離乳食!」

「栗」

チャラい添田の顔が歪んできた。

「り、り、り………竜宮城!」

「瓜」

「うう……。あ、リボン!……あ」

着物の添田が、口元をにやりと釣り上げる。

「勝負あり、のようですね」

「『り』ばっかり使うからっすよ!」


ふふっと笑い、満足げな表情をして着物の添田は立ち上がった。

一瞬、その場が静まり返った後、いきなり勢いよく練習室の扉が開く。


「お前ら!」

加藤は、練習室全体に響く声で二人を呼んだ。

二人は顔を見合わせてから加藤を見る。

「何でしょうか」「ん?」


何故か呼吸が荒い加藤は、ハア、ハア、と息継ぎをしながら、さっきよりも大きな声で叫んだ。

「今から特訓だ!!」