コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 甘い毒と、危険な香り。 (1) ( No.13 )
- 日時: 2016/05/23 19:06
- 名前: あさぎの。 ◆TpS8HW42ks (ID: LN5K1jog)
私たちは学級委員。
いくら好感度稼ぎだとはいえ、仕事はしっかりやっている。
今日だって、部活に所属していないのにもかかわらず教室に二人で残り、せっせとプリントをホッチキスで止めていた。……学級委員は、あんたの雑用係じゃないんですけど。そう言いたかったのに抑えた私、よく我慢したなあと思う。
仕事が終わり、絢都と並んで校庭を眺めていると、見慣れた栗色の髪が目に入った。
あの子は体育委員。
ライン引きだったり倉庫の整備だったりをやるため、校庭を走り回っている。非常に元気だ。
走るたびにぴょこぴょこ揺れる、高めの場所でひとつに結った髪が、彼女の性格を表しているようだった。
容姿も性格もいいし、これはみんなが惚れるわけだ。
「あ、鏡! 絢都!」
じっとその姿を見ていると、視線に気が付いたのか、なゆはこっちに向けて大きな笑顔で手を振ってくれた。絢都さん、顔が緩んでますよ。
私たちも、小さく手を振り返す。若干恥ずかしい。
すると、なゆは両手をメガホンのようにして、「今そっち行くね!」と言って——じゃない、言い終わらないうちに校舎の方へと駆け出した。なゆさん、君の声はそんなことしなくてもめっちゃめっちゃ通っているよ。
「……好きだなあ」
ぽつり。絢都は、呟いて、苦しげに目を細めた。
手すりにもたれかかって、細く長く息を吐いた絢都。色気が出ている。私はそっと、息を飲んだ。
鋭くて三白眼気味の、切れ長の目。
白い肌、高い鼻に薄い唇。少しひょろいけど、スタイルは抜群。
イケメンというよりかは、美人な感じの絢都。そんな人から漂う哀愁は、一種の毒みたいだ。
——どうやら私は、その甘い毒に絡めとられてしまったよう。
思わずどきりとしてぼんやりしまった私を、強制的に現実世界へ引き戻すかのように、教室の戸がガラリと開いて、なゆが入ってきた。
「一緒に帰ろ!」
……おっと、私は邪魔なようだ。