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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 甘い毒と、危険な香り。 (2) ( No.16 )
- 日時: 2016/05/25 20:23
- 名前: あさぎの。 ◆TpS8HW42ks (ID: LN5K1jog)
一人で歩く、帰り道。
絢都の背中を押した私は、一人で帰っていた。
一人で帰るのは、久々だ。大体、隣には絢都がいて。押し込めていた弱音や想いを、ぽつりぽつりと話すのが、ある意味私たちの日課になっていた。
絢都がいない日には、なゆがいてくれた。
なゆと帰るのは絢都とは別の意味で楽で、楽しくて、やっぱりこの子が親友で良かったと思う。世界で一番、私が大切に思っている友達だ。
——同時に憎くも、あるけれど。
「……はあ」
最後、洸と一緒に帰ったのはいつだったっけ。
中学生——いや、下手したら小学生のときだったかもしれない。
それくらい、私は洸と帰っていないのだ。それはなゆと洸が付き合う前からで、好きだ好きだと言っている割には、一番距離の遠い幼馴染なのかもしれない。
(……ま、まじか)
今さらになって、ショックを受けた。一番距離が遠いなんて、そんな馬鹿な。
でも、そうかもしれない。確かに、二人と比べて洸とは話さない。一般から見た男女にしては話す方だと思うけど、なゆや絢都と比べたら話していない方だ。1:4ぐらいの割合。え、少なくない?
唸りながら考えていると、後ろから名前を呼ばれた。びくっとして振り返る。
「ひか、る」
私が紡いだ声は、掠れていた。そのくらい驚いた。
そりゃ嬉しかった。嬉しかったけど、私の中での洸の立ち位置がごちゃごちゃになっていたから、今は会いたくなかったかな、なんて。ちなみにそれは、わがままだとは思ってる。
洸は、そんな私の心情なんて知らずに笑った。
「一緒に帰ろうぜ!」
50メートルくらい離れていたけど、ちゃんと洸の太陽みたいに輝いてる笑顔は見えた。
——うん。
私も、あいつに負けないくらい笑った。
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