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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 甘い毒と、危険な香り。 (4) ( No.18 )
- 日時: 2016/06/29 19:40
- 名前: あさぎの。 ◆TpS8HW42ks (ID: MwvvJcXZ)
結局、洸の家でみんなが集まることになった。
洸のお母さんは心優しく承諾してくれたし、私たちはみんな近所なので、自分たちの親にわざわざ許可をとるでもなく、洸の家に上がり込む。
なゆも絢都も喜んでいたけど、絢都は何かしらを察したようで、「後で話せよ」なんて言われてしまった。
「……鋭いなあ」
呟きが漏れた。隣で野菜を切るなゆには聞こえていなかったらしい。
呑気に鼻歌なんかを歌いながら、軽快に玉ねぎを切っている。それはもう、指を切ってしまいそうなスピードで——、
「あ」
「ざっくり行ったねえ」
いや、実際に切った。
赤い血が滴るのを反対の手で防ぎながら、リビングでテレビを見ている洸に向かって声を掛けた。
切っちゃったー、と笑うなゆ。痛みには強いらしい。
今更だけど、ざっくり行ったねえ、なんて思い切り血が出た人の言うセリフじゃないし。
「何でお前そんなに平気なの……」
「そんなに痛くないよ?」
「見てるこっちが痛くなってくるレベルなんだけど」
世話焼き体質の洸は、飛ぶように絆創膏を持ってきて、なゆの指に貼る。
洸の横では、絢都が羨ましそうにそれを見ていた。
そういえば絢都、小さい頃なゆに撫でられるの好きだったっけ。それの名残で今もなゆの手が好きなのか。
……ちょっと変態くさいっていうのは、言わないでおこう。
絆創膏を貼ってキッチンに戻ってきたなゆは、少しだけ悲しそうな顔をしていた。
何でだろう、と思う私の横に立って、彼女は笑った。
「手、大切なのになあ……——」
その笑みは、息を飲むほど絢都に似ていた。
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