コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 哀愁物語ー愛を誓ってー ( No.12 )
- 日時: 2016/06/12 08:57
- 名前: 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM (ID: E/OZE6Yo)
- 参照: ちほりん→とらじ、澪羽、*織*→夏目 織、リザ、桜里
*第三話
中に入るとそこは、予想よりも少し小さめな部屋だった。
内装は先程の王室と変わらず豪華だったが、灯りはなくステンドグラスから太陽の光が洩れている。
ふとステンドグラスに目をやると、とてもカラフルな色使いで人のようなものが描かれていた。奥にある銀色の板には「HERO RALSE」と描かれている。きっと、この人物の事だろう。
「パウロさん」
ーー姫様の声で、ハッと我にかえる。いけないいけない。すっかりステンドグラスに見入ってしまった。話が終わったらまた見ることにしよう。
「すみません、内装がとても綺麗で……あの、話っていうのは……」
「いえいえ。ーーそうですね、そろそろ始めましょうか」
ーーそこまで言うと姫様は先程入ってきたところのカーテンを閉め、何処からか登場した椅子を置き、姫様と僕が座ると口を開いた。
「魔王、というより今の魔王の前の時代の魔王の話なのですがーー」
姫様から聞いた話の内容はこうだった。
ーーはるか昔、とある一国の王女が深い眠りについたらしい。息はして、死んでもいないのに目を開けない彼女を人々は不思議に思ったという。そんなとき、一人の青年ーー後に英雄となる彼が、立ち上がった。深い眠りについた王女を救おうと言うのだ。
そして不思議なことに、彼の右腕には不思議な形の痣があった。そしてそれは王女ーーミリア姫の首筋にもあったらしい。
救おうと決心した青年ーーラルスだったが、原因不明の彼女を助ける術は見つからず、諦めようとしていたその時、ラルスはとある伝説を思い出した。
ーー彼女の眠りを覚ます者、世界を闇に包み込む。
これは、数千前に同じく一国の王女が眠りについてしまい、それを救った英雄が最期に残した言葉だったらしい。
世界を闇で包み込む、その者の正体をラルスは知っていた。
ーーそう、それが〝魔王〟だ。
ラルスは直ぐ様旅立ち、魔王についてどんな小さな事でも聞き逃さなかった。
そんなある日、ラルスと同じく冒険者たちのもとでとある噂が広まった。
それは、魔王が〝魔界〟にいるとの事だった。
ラルスは危険を承知したが、やめなかった。彼は、姫を救うなら自分の身を捧げても良いと思ったのだ。
たった一人で魔界に行き、彼はーー二度と眠りの覚めた姫の元に現れることはなかった。
帰らぬ人となった英雄ラルス。だが彼がいなかったら、きっと世界は闇に閉ざされていただろう。
ーーだがこれは、1000年も前の話。
今この時代で、魔王は再び甦った。