コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 今、好きな想い ( No.18 )
- 日時: 2017/03/31 13:24
- 名前: アリン (ID: qlQjtvRq)
*.* 恋と傘 *.*
今日は雨かな。傘持ってきてるかな。
私がこう思うのは理由がある。
「茶堂さん、今日は雨降るかな?」
「あー。降るって言ってたな〜……って『希』でいいよって言ったじゃん、陽菜美」
「あ、そうだった! ごめんね、希」
何故か、会話がおかしくて二人で笑ってしまう。
希は同じ時期に入った会社の同僚で、仲のいい子だ。規則的な生活をいつものように過ごしていて、ニュースは彼女の必需品らしい。
だから、天気の事はいつも希に聞いている──私は朝にテレビを見ている時間がないから天気予報は見ない。いや、見れない。
「今日も行くの? 傘王子のところ」
「傘王子って……うん。きっと傘持ってないだろうしね」
傘王子──希が私が傘傘と言う時に絶対に出てくる人だからという事で勝手につけた名前──とは、陽菜美の彼氏の木島 優のことだ。
彼も天気予報を観ないからいつも雨の日はびしょ濡れになるため、陽菜美が傘を彼に持って行ってあげるのだ。
「よし! お疲れ様でした!」
「お疲れ様〜」
雨の日だけは残業はしない。
いつもは時間内に仕事が片付かなくて、残業になってしまうが、雨だから早く終わらせる。
「あ、優くん!」
『陽菜美さん!』
優に近づいて見てみると全身が濡れていた。
「あーまた濡れてる! 傘持ってなきゃダメだよっていつも言ってるじゃない!」
カバンからハンカチを取り出して、肩や顔についた雨を拭いてあげた。
『ごめんごめん。今日は降らないと思ってたから……』
「はー。仕方ないなー」
呆れながら、ハンカチをカバンに戻して、傘を開ける。
『あ、傘。俺が持つよ!』
「あ、ありがとう」
そう言って優は傘を持って車道側を歩いた。
肩が当たる距離。心臓がバクバクして、優に聞こえてないかなとそちらをみる。
聞こえてはないようだった。
優の顔を見るとき、肩が濡れているのに気づいた。
「優くん! 肩が濡れてるよ!?」
『あはは、いーのいーの!』
そう言いながら、笑った優。
名前の通り、彼は本当に優しい。陽菜美にとってとても大切な人。
「ねえ、優くん」
『ん?』
「優くんと……ずっと一緒にいたい。だから」
『陽菜美さん!』
「は、はい」
『結婚してください!』
一つの傘の中。
聞こえるのは、自分の心臓の音と雨の音だけだ。
「はい」
小さな傘の中で小さな恋は大きな愛に変わる。
雨の日はこの事がいい思い出として思い出せたらいいなと思った。