PR
コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 今、好きな想い ( No.5 )
- 日時: 2017/01/05 14:14
- 名前: アリン (ID: qlQjtvRq)
*.* 甘くないコーヒー *.*
少し霧のある肌寒い早朝のこと。
いつもこの時間帯に華奈は学校に行く。
ある人に一番に会うために。
「あ、山川先生!」
『おはようございます。平岡さん』
「おはようございます。先生! 相変わらず早いですね」
『平岡さんもじゃないですか』
黒縁眼鏡の山川 隆先生は保健の先生で基本は保健室にいる。
どの先生よりも早く来て、水筒に入れてきたコーヒーを飲むのがこの先生の日課。
「また一人でコーヒー飲むんですか?」
『一人でって……あれでしたら一緒に飲みますか? コーヒー』
「……はい! よろこんで!」
私はこの人に会うために朝早くに学校に来ている。
『はい。砂糖は入りますか?』
「もらいます」
『はい、どうぞ』
「ありがとうございます! じゃあ、いただきます」
暖房をつけたばかりのまだ寒い保健室。
まだ温かいコーヒーを飲んで、息を吐くと白い息が出た。
湯気が出ているコップの周りを手で包んで、自分の手を温めながら、窓の向こうのどこかを見つめている山川先生を見る。
「……先生。好きですよ」
『……また君は。……そう言うことは本当に好きな人にしか言っちゃダメですよ』
一度華奈を見てからコーヒーを一口飲んで、またどこか同じところを見つめている。
そんな先生に笑ってみせた。
「あはは。そうですよね。……からかってすみません」
どこかを見つめている先生を私は見つめている。
── 私がいつも早く来るのは先生に会うためですよ。そろそろ気づいてよ。……バカ。
私は誰にも気づかれないように。
そっと先生に恋をしていた。
先生には他に想っている人がいると分かっていながら。
先生の机の上に飾ってある写真を見る。
「……綺麗な人ですね」
PR