コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 俺達は人生ゲームの敗北者 ( No.10 )
日時: 2016/06/09 07:33
名前: 雪姫 (ID: tVCgD/M1)






mission1 level3




無——


そう今の俺は無だ——

なにもないようにみえて、確かにそこにある。

波に揺れる海のように…なにも感じない。

クラスの連中が俺の事を認めてないもとい、存在自体を認識してなかったとしても、そんなことは気にしない。気になりなんかなるもんか…グスッ

「もう、また自分の世界に入ってるの?」

顔をあげると、幼馴染の隣がぷくーと膨れ怒りながら仁王立ちしてた。

「べつにー。眠かっただけた」

と言いながらフードを脱ぎ服装を整え、教科書を閉じ机の中にしまう。

「そんなんだからクラスのみんなに名前、憶えてもらえないんだよ」

はぁ…やれやれっといった感じで、隣は頭を振る。「お姉ちゃんは悲しいよ」とまで言っている。いや、俺とおまえっ同い年だろっ。

俺と隣の関係を一言で言い表すなら“ベタな幼馴染”だ。

なにのどこらへんがベタなのかというと

1・家が近所と言うか、隣同士
2・親同士が仲がいいためよく、家族ぐるみで付き合いがあり
3・いつも一緒にいて
4・そんなこんなで今にいたる

というわけだ。簡素でわかりやすいだろ?なんかギャルゲの主人公とヒロインみたいな関係で、俺はあまり好きじゃない。

それにもっとギャルゲっぽくなるからあまり言いたくないなんだが、じっじつは…隣は…お、俺の…初恋の相手だったりもする…わけだ。

ま、まあでも、“だった”でわかると通り過去形だ。失恋したんだ、身勝手に自分勝手に…

あの日の事は今でも忘れねぇ……いや忘れられるわけがねぇ…。





あれはまだ俺達が小学生の頃だった——


                                               + + +





小学生時代 六年生のある日の出来事 


誰もいない朝の教室。

いつもはりんに叩き起こされてしぶしぶ来てた学校だけど、きょうはちがう。しろよりもはやくおきて、だれよりもさきに登校してきたんだ。

どうしてかって?そんなこと決まってらぁ、えっと…その…りんに告白しようと思って、すきですって。

でもまさかおれがりんに対してこんな感情いだくなんてなぁ…。

おれとりんは赤ちゃんのときからずーといっしょにいたんだ。

それにあいつぜんっぜん女の子っぽくないし、たまにおれよりも男らしいとこあるし、だから正直自分でもびっくりしてる。

ぜんっぜん意識してなかったのにどうして急に意識しはじめたかというと…

それは去年のこと。小学五年のときだ。いつものようにりんと二人で公園でサッカーして遊んでたんだけど

「よこどりー!」

「あっ…ぅ」

「……ぁ」

りんの蹴ってるボールを横から蹴ろうとしたら、りんの胸に肘が当たっちゃって

「…ぅぅ」

「ごめんっ!りんっだいじょうぶかっ!?」

「…ぅん。だいじょうぶ」

「…そうか、よかったぁ」

苦しそうに胸をおさえてたけどだいじょうぶそうでよかった。

でもおれの方はだいじょうぶじゃなくって…

「やわらかかったな…」

当たった肘にはやわらかい感触が…。

そのときはじめてりんがおれとはちがう、女の子なんだって気が付いたんだ。

対等の友達じゃなくて、まもってあげないといけない存在なんだって、まあ後半は父ちゃんの受け売りだけど…。

それ以来その…意識しはじめちゃって…きょうにいたるわけです…はい。

りんに直接「すきです」って言う勇気がないおれは、手紙で告白する事にしました。人生初めてのらぶれたーです。

りん…ちゃんと読んでくれるかな?ドキドキしながら、りんの机の中へ手紙をしのば……

「ん、なんだコレ?」

「あっ!」

いつもは時間ギリギリに来るはずのガキ大将がなぜかきょうに限ってはやくきて、りんへの手紙をうばいとった。

「なになに〜」

「や、やめろよっ」

止める間もなくガキ大将は、手紙を開き中身を声に出して読みだした。

「”大好きなりんへ”だって〜〜〜〜わーーーラブレターだーー」

大きな声で叫ばれたソレは、登校してきた他のクラスのやつらの耳にも入り、ぞくぞくと人が集まってくる。

「えぇーだれがだれにー?」

「サカナがりん大好きだってぇー」

「まじーサカナのくせに、キッモー」

「生意気だよね、サカナのくせに」

ケラケラと笑いながらみんな「キモイ」「サカナのくせに」と連呼する。

「…あ」

時計を見るともうみんなが登校してくる時間だ。集まって来たやつらの中にりんの姿があった。

りんも他の女子達にからからわれているみたいだ。おれが告白なんてしようとしたせいで…

「…ぅぅ」

たえきれなくなりその場にしゃがみこんだ。涙があふれてくる。

「「なーいた、なーいた、サーカナがなーいた」」

ケラケラと笑い手拍子をしながら、みんなでぼくをからかう。

「ごめんっどいてっどいてってばっ」

人をかき分けながら、りんがおれのところまでやってきた。

「な、なんだよ…」

りんはいつも通り泣いてるおれに手を差し伸べ

「だいじょうぶ?たてる」

でもおれはその手を

「うるせぇー、ブスっ!」

はねのけぜったいに言ってはいけないひとことを言ってしまったんだ。

「おまえなんか…おまえなんか…だいっっっきらいだぁぁぁぁ!!」

と。それまで盛り上がっていた教室も嘘みたいにシーンと静まり返った。

すぐに「ごめん」って言わないとあやまらないとっ、と思い言おうとしたんだけど、りんは

「りんごめっ」

「……そっか」

「ぇ」



ただそれだけだった——

  泣きわめくでもなく
          怒るでもなく
               笑ってた いつものように——


Re: 俺達は人生ゲームの敗北者 ( No.11 )
日時: 2016/06/09 08:41
名前: 雪姫 (ID: tVCgD/M1)







(魚)




                   “俺は優しい女の子は嫌いだ——”

ほんのひとことあいさつをかわせば気になるし

メールが行き交えば心がざわつく

電話なんかかかって来たその日には、着信履歴を見てついほほがゆるむ

だが知っている それが優しさだということを——

俺に優しい人間は、他の人にも優しくて

そのことをつい忘れそうになる

真実が残酷だと言うのならばきっと嘘は優しいのだろう

だから優しさは嘘だ——

いつだって期待して

いつも勘違いして

いつからか希望をもつのはやめた

訓練されたぼっちは二度も同じ手にひっかかったりしない

百戦錬磨の強者 負ける事に関しては俺が最強

          

            だからいつまでも 優しい女の子は嫌いだ——




                        + + +



「リョウ?」

「んあ」

「なんか難しい顔してるよー?リョウらしくもない」

「ちょっと考え事してた」

「ふーん…」

あの日以降も隣はいつも通りに俺と接する。何事もなかったかのように。

隣がそんなだから他の奴らもそれ以上のことはなにもしてこなかった。

優しい隣のおかげで俺の平和な学校生活はたもたれた、ようにみえたが実際はそうじゃない。

俺も優しい隣に対してなにも思わなかったわけじゃない。

いろいろ思うところあって、きまずくなって、あの日以来どことなく隣を避けるようなった。ぼっちの道を貫くことにした。

「それで、ご用件は?」

「ようけん??」

「なにしに来たんだよ…おまえ」

「あぁ!えっとねぇ…何しにきたんだっけあたし」

「………」

こいつマジか…。馬鹿だとは思っていたがここまでとは…。

「ああ、思い出した!すうがく!数学の教科書借りにきたんだった。ふぅー、よかった思い出せてー」

「ほんとだな、っとゆうかまたか」

「えへへ」

こいつはよく忘れ物をする。そしていつも俺に借りにくる。

まあそれだけ俺が信頼されてる…わけもなく、すべての教材をロッカーにおきべんしてるからだ。

いつでも貸し放題だ。…返ってくるかどうかはおいといて(過去に何度かカリパクされた経験アリ

「二人はいつも仲がいいね」

「あっ奏くん」

声がしたほうを見ると金元が立っていた。いつもみたく爽やかスマイルで

「「キャー、金元君だー、キャー」」

俺に対しての陰口が一気に金元への黄色い歓声へと変わる。

金元とは中学の時からの知り合い。ただの知り合いだ。

金元と魚谷二人合わせて「金魚」コンピなんて呼ばれてた時代もあったが昔の話だ。
俺はこいつが嫌いだ。

サッカー部のエースで爽やか王子っていう異名も嫌いだが、なにより一番嫌いなとこは俺を利用してることだ。

おそらく金元は隣の事が好きだ。隣と仲良くなろうと思ったら、いつも一緒にいる俺が邪魔者なわけだ。でも俺を退場させたら自分の地位が危なくなるし、下手したら隣に嫌われるかもしれねぇ。

そんな危ない橋わたるよりも、俺を仲良くしてるふりをして近づいてきたほうがずっと有効的だ。

…この金元の策に気が付いたとき泣きそうになった。

「奏くんもリョウにようじー?」

「うん。次の移動教室に使う教科書われちゃってさ」

「えぇー奏くんが忘れ物なんてめずらしいこともあるんだね」

そうか、だから今日雨降ってんのか。

「昨日予習するために持って帰ったら、そのまま机の上に置きっぱなしだったよ」

「うわっ理由もすごいっ。あたしなんか、苦手科目だからもってくるのも苦で苦で〜」

だからって俺に借りればいいや〜ってことにはならないだろ。

「リョウの四次元ロッカーはすごいよ〜ねっ」

「あっ?お、おう」

やべっ、急にふられたから変に返事しちまった。

「ふふっ。サナヤ君、僕も借りていいかな?」

…こいつを嫌いな理由もう一つあった。「サナヤ君」と呼んでくるとこだ。

初めて呼ばれた時からずーと、こいつは俺の事を「サナヤ君」と呼ぶ。誰だそれ。このクラスに「サナヤ君」という奴はいねぇ。

「かまわねーよ、ほら」

金元にロッカーのカギをほうる。

「よっと」

「ナイスキャッチ」と歓声があがる。ちっ。

うちのロッカーは防犯のため全部、カギ付きだ。

昔はカギ付きおろか扉すらないただのボックスに入れてたらしい。

だがそんなんだと、ぼっちの財布がリア充どもに盗まれまくって、被害届が続出だったため、去年から全部カギ付きロッカーとなったらしい。

マスターキーもある。それはやっぱり校長と理事長が一本ずつ持っているらしい。

「あー!まだなにもつけてなーいっ」

突然隣が大声をあげる。

「なにが?」

「なにが?じゃないよっ。カギ、なんにもつけてないじゃんっ」

確かにカギにはなにもつけてないし、書いてもいない。銀色のごく普通のどこにでもあるカギだ。

…たまに家のカギと間違うときがある。

「それがどうした?」

「だーかーらー、どうしたじゃないってばっ。落としたらどーすんの!?こんなサラの状態だったら、見つけてもらってもだれのかわからないよ」

「べついいだろ、戻ってこなくても。スペアあるし」

「そうゆう問題じゃなーい」

Re: 俺達は人生ゲームの敗北者 ( No.12 )
日時: 2016/06/11 15:54
名前: 雪姫 (ID: 5YBzL49o)



しょうがないなーと言いながら隣はスカートのポケットに手を突っ込み、なにかを探し始める。

そして「テッテレー」と青い猫型ロボットよろしくの効果音を口にしながら取り出したのは…

「げっ、たこねこマン キーホルダー」

たこねこマンとは

たこ焼きの被り物をした虎猫のキャラ。表情はなぜかにんまりスマイル。
なにかのアニメキャラなのか、マスコットなのか、ゆるきゃらなのか、何処かのご当地なのか、キモカワイイのか、ただひたすらにキモイのか、俺にはよくわからないが今女子たちの間ですごい流行っている。

「これでもう安心だね♪」

などと考え事している間に、隣のやつ俺のカギにたこねこマン キーホルダーをつけてご機嫌の笑みだった…。

「いつ、どこで、落としたとしてもきっとだれかがリョウの元まで届けてくれるよ」

「いやっ、たこねこマンじゃこねーだろ。普通、女子のだと思うんじゃ?」

「だいじょーぶ、だいじょーぶ」

隣はなぜか自慢げだ。

「女子達の間で出回ってたら、あたしの所に回って来たとこで気づくし、それに証人はここにいっぱいいるよ?ねー」

「「おぉぉ!そのキーホルダーがついたカギ、見つけたら魚谷くんに届けますっス」」

「ありがとーみんなー」

おまえはアイドルかっ。あっ…アイドルか、学校内の。

男共は「りんちゃーん」と意気揚々に手振っている。…がその反面、女子たち(たこねこマン好き)は、「あれ限定モノじゃない?」「ウソッ、なんで尾久村さんもってんの」「意味わかんなーい」とこそこそ陰口をたたいている。

ふぅん、これ限定モノなのか…なんで隣はこんなレアモノおれにくれたんだ?

「あ〜、かなでくぅんみぃ〜けっ!」

いきなり俺の視界に乳が…デカイ乳が…

「あっ乳子ちゃんだっやほ〜」

「チッ尾久村 隣……うふっ、やほ〜♪」

あっ察し。デガイ乳の正体は、ホルスタイン 乳子だった。俺様命名。本名は別にあるけど、親しくないからしらねぇ。

乳子はその名の通り、胸がバッッカデカイ、それはもはやメロンやスイカのように。

けどいいのは乳だけであとは駄目だ。腐ってる。

見た目はセクシーだし、姉御肌な感じとかお色気系のキャラでいけばいいのに、本人は真逆のあまったるい話方でゴリゴリご自慢の胸を押し付けてくる、ムカつく可愛い系キャラを演じている。

当然他の女子たちのウケはよくない。みろよ、あの女子達の目。あれは敵を見る目だ。

まあそんな些細なことを気にするような乳子じゃ、ないんだけどな。

「ねぇ〜ねぇ〜かなでくぅ〜ん。そろそろ移動しないと、ち・こ・くしちゃうよぉ〜」

「わぁーほんとだー」

時計を見た隣が大きな声をあげる。隣に空気を読む、という機能は残念ながらついてない。

乳子は「…アンタには言ってないわよ」と言いたげに隣を睨みつけている。

「そろそろ行かないとだね。じゃ、サナヤ君教科書ありがとね」

「またねーリョウー」

「おう」

手を振りながら嵐たちは去っていった。ちなみに乳子は無言で俺を睨みつけたまま出ていった。

どうやら金元と仲良くしてるのが気に食わないらしい…。

別に仲良くなんかねぇーし、男同士なんだからライバルになるわけないだろっ!…と心の中でツッコミをいれ、次の授業の準備をする。

「…あ。次の授業、数学だった」



















(豚)

次の授業にいる教科書を隣に貸してしまった亮也はどうなったのか——!?
とかとかごく一部分の方は気になるかもしれにゃいけど〜〜〜からの〜〜スキーーーップ!!
そんなこんなのなんやで時間は流れ あっとゆうまに放課後。




▽放課後 教室にて



授業も終わり、夕暮れの放課後。さあ、おまえらは何をする?

部活動に精を出すか?全国大会目指すか?

トモダチと教室や校門前で仲良く時間を忘れるまでお喋りか?

図書室にこもって、予習・復習・宿題。勉強に励むか?


ふんっ。ぼっちを貫いてきた俺は違う。そんなことはしない。

帰宅部である俺はまず、

誰よりも先に変える準備を終え

誰よりも先に教室を出て

誰よりも先に上履きを履き替えて

誰よりも先校門をでてかえ——

「“二年二組の魚谷 亮也くん。至急 職員室へくるように——”」

る…んだいつもなら。

でも今日は運悪く、あの鬼教師に捕まってしまった…。







mission2 「高校生活の振り返り方」へつづく