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- Re: 恋花火—ひと夏の恋— ( No.10 )
- 日時: 2016/08/03 17:54
- 名前: Aika (ID: qMXr7W56)
Episode9:海里の想い。
夏の夜空に大輪の花火が咲くなかで
君は、 そっとわたしの耳元で呟いた——。
『好きだ』
突然のことに
わたしは、何も言葉が出てこなくって…
ただ、海里の真剣な瞳を見つめるばかりだった。
海里の顔は少しだけ赤く染まっていて。
照れ臭そうな感じがすごく伝わってきた——。
「俺…本気だから」
震える海里の声。
緊張…してるのかな。
そりゃそうか。告白、だもんね。
——『告白、してみようかな』
そのとき。不意に七夏のそんな言葉が
頭の中に響いた。
バカだな——。わたし、何を忘れてるんだろう。
七夏は海里が…好きで今日告白するつもりなのに。
なのに。
——あれ?でも、海里はわたしに告白しているってことは…海里は七夏のことを何とも思っていないってこと、だよね。
じゃあ…七夏は、 このまま告白したら失恋してしまうってこと———??
「空…??…また、ボーッとしてる」
我に返ると、そこには海里の顔。
ち…近いんだけど。
わたしは、慌てて海里から顔をそむけた。
「だっ…だいじょーぶ。少し考え事を」
「七夏のこと?」
予想外の…海里の言葉に。
わたしは耳を疑った。
「知ってるの??…七夏の気持ち」
そう聞くと。
海里は優しい表情で頷いた。
「俺さ…アイツと中学の時に付き合ってたんだ」
——え…??
付き合ってた——??海里と…七夏が??
そんなの、七夏は一言も話してなかった。
驚くわたしを置き去りにして
海里は話を続けた。
「それで…高1で俺から別れを切り出した」
「なっ…なんで!??」
「お前と…空と出会ったから」
夏の風が。
二人の間にそっと流れる。
海里の細い黒髪がなびいていた。
わたしはなぜか、真っ直ぐに視線を向けてくる
海里の顔を直視することができなくて。
下を向いてしまった。
「空は…いつも自分のことより友達のこと優先で…周りを思いやってるだろ??なんかそういうところが放っておけなくて…守ってあげたくなるんだよな」
明るく笑う、海里——。
その表情がなぜか、蛍と重なって見えて。
胸の奥が切なく、痛む。
「あと、みんなと笑ってるとき…時々見せる寂しそうな顔が俺…すごく気になっててさ」
そんなところまで。
海里は…見てくれてたんだ、わたしのこと。
きっと、それは。
蛍を…想っているときだ。
「もしかして、さ。寂しい顔してる時って好きなやつのこと、考えてるの??」
わたしは、優しく微笑んでから。
顔を小さく縦にふった。
「うん…今でも大好きで…忘れられない人」
涙が自然とこぼれた。
何の…涙なのか自分にもわからなかった。
蛍への叶わない想い?
海里への答えられない気持ちに対して?
七夏への申し訳無さ?
頭の中がぐちゃぐちゃで…
よく分からない。
海里はそれ以上は何も聞かず
わたしをそっと優しく抱き寄せて。
泣き止むまでずっと、そばにいてくれた——。