コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 恋花火—ひと夏の恋— ( No.11 )
日時: 2016/08/17 17:00
名前: Aika (ID: OSct4JfX)

Episode10:3年ぶりの再会。




3年ぶりに再会した貴方は、とても大人びていて。
知らない男の人みたいだった———。



■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □


「ありがと…海里。…もう、大丈夫だから」

花火の音が鳴り響くなか。
泣きじゃくるわたしを、ずっと抱き締めてくれていた海里。
わたしは、か細い声で海里にそう言った。
すると、海里はそっと抱き締めていた手を離して静かに口を開く。

「…そっか。なら、良かった。なんか悩んでたら言えよ?」

その言葉に、また泣きそうになる。
どうして…海里はそんなに優しいの———??

わたしには、貴方に優しくされる資格なんか何もないのに。


「ありがと。…でも、ごめん」

わたしは、海里の顔を真っ直ぐに見れなくて。
うつむきながら言う。

「……今は、 一人でいたい」

海里に『好きだ』って、言われて。
嫌じゃなかった。本音を言えば、すごく嬉しかった。
でも。


このことを、七夏が知ったら…どう思うだろう。


私達…もう、友達じゃいられなくなるの?
そんなの、嫌だよ。…もう、蛍みたいに
大事な人を失いたくない。


だからこそ、一人で考える時間がほしい。


「少し…気持ちの整理をさせてほしいの。後で絶対にみんなのところに戻るから」

そう言うと。
海里はかすれた声で小さく呟いた。

「……分かった。ごめんな、お前のこと困らせて」

わたしは、何も言わず首を横に振る。
違う。海里は…何も悪くない———。
悪いのは、 過去にとらわれてる…わたしだ。

「ただ、止まらなくってさ。悲しそうな空を見てたら…幸せにしてぇなぁって思っちゃって———」

———海里。

そう言って、海里はわたしの頭をそっと撫でて
優しい瞳で言う。

「俺はいつでも待ってるから」

そう言い残して。海里はわたしの横をすっと通りすぎて
屋台の方の賑わいのなかに姿を消していった。



わたしは、力なくその場にしゃがみこんで。
こらえていた涙を流した。


あんなにも、真剣に。海里はわたしをずっと想っていてくれていた。
なのに、わたしは。




自分の気持ちがはっきりできなくって。
嫌になる。





わたしは、 今でも、 蛍のことが好きなの———??




そう心のなかで問いかけた瞬間。
———ガサッ

木の小枝を踏むような音がして。
とっさに振り返ると。そこにいたのは———。


「嘘…」


3年越しに見た、 愛しいあの人———。


夏の夜の幻かと思った瞬間。
目の前の貴方は小さく呟いた。



「空…??」


ずっと、 呼んでほしかったわたしの名前を。
3年ぶりに再会した貴方は。
背が高くなっていて、声も低くなっていて。
大人びていて———。

わたしは、凍りついたように目の前にいる貴方から目を離せずにいた——。