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Re: 恋花火—ひと夏の恋— ( No.13 )
日時: 2016/11/13 15:51
名前: Aika (ID: U7zErvcm)

Episode12:瞳に映らない。




.;:*海里side*;:.




——『うん。今でも大好きで、 忘れられない人』



そう言ったアイツの顔はとても辛そうでただ、 泣きじゃくるばかりで———。


俺はなんて言葉をかけるのが正解なのか
分からなくて…何も言えなかった。




髪をぐしゃっとかきむしりながら
俺はうなだれる。



「分かってた…アイツに好きな奴がいることぐらい」

それが誰なのかなんて分からないけど
最初から知ってた。
アイツにアイツに…空に想い人がいて
その視線の先が俺じゃないことなんか分かってたんだ。

それでも、 好きっていう想いは止まらなかった。
空のことを知れば知るほど好きになっていって———。



こんな気持ちになるのは生まれて初めてだった。




「俺じゃ…駄目なんだな、 空」

夏の夜空に大輪の花が咲く中で
俺は一人…そう呟いた。

その時だった。



「海里」



ふと名前を呼ばれた気がして
横に視線を向けると。

そこには、 少し息の上がった様子の七夏の姿があった。
髪も少しだけ乱れていた。



「どこ行ってたの…?探したんだよ」



心配そうな七夏を俺は無視する。
正直、今は誰とも話したくない。そんな気分だった。



「一人になりたかったから…わりぃけど、今日はもう帰る。みんなに言っといて」

そう言って、その場から去ろうとすると。

「待ってッ…!!」

後ろから思いっきり抱きしめられた。
突然のことに思考回路が停止して俺は何も言葉が出てこなかった。
そのまま、黙ったままでいると七夏が震える声で言う。

「好き、 なの」

それは人混みの喧騒にも消えそうな
か細い声だったのに。

なぜか、 俺の耳には痛いほどに響いてきて———。

「まだ…海里が好き」

抱きしめられていた手を振りほどき後ろを振り返ると。
涙でにじんだ七夏の顔があった。

その顔に胸が痛む。

七夏の気持ちに関しては見て見ぬふりをしてきた。
まだ俺に気があることも知ってた。
でも…俺にはもう…七夏をそんな風に見ることはできなかった。
だから自然と七夏が俺を諦めてくれたらいいのにっていう都合の良い事ばかり考えていた。

でも、 現実はそんなに単純になんかまわってくれなくって。








「———ごめん。 俺にはもう七夏をそんな風に見れないから」



七夏、 ごめん。
俺は最低な奴だからこんな言い方しかできない。
七夏は少しだけ間を開けた後。



「やっぱり…空が好きなんだね」




そう言って優しく笑った。
七夏は…気づいてたんだな。俺の気持ち———。
驚いた気持ちを隠せないでいると七夏が笑いながら茶化したように言う。


「気づいてないとでも思った??バレバレだしっ」
「……ごめん、 ごめんな。七夏」
「謝らないでよ、余計にむなしくなるじゃん」

謝らないで、か。
確かに七夏からしたらこれはウザいよな。
でも、他になんて言ったらいいのか分からないんだよ。
俺が困った様子でいると、七夏が優しい顔で言う。



「応援してるからさ、 頑張りなよ。わたしももう海里のことはこれで忘れるから。じゃあねっ!!」

そう言い残して七夏は背を向けて走り去っていった。
応援してる、 か。
その言葉にズキズキと心が痛む。
俺ももうフラれたんだけどな。






満開の花火が咲き誇る中。
俺は一人思う。






どうして、 恋愛は。

















誰かを傷つけてしまうんだろう。