コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 恋花火—ひと夏の恋— ( No.16 )
日時: 2016/11/29 01:04
名前: Aika (ID: SsVmP61.)

Episode13:過去の記憶。



*:.・。七夏side。・.:
*


『わりぃ。七夏とはもう付き合えねーわ』

——高校1年の夏ごろだった。
中学2年からずっと付き合ってた海里に…突然別れを告げられたのは。

わたしは、いきなりのことに何も言葉を発することができなくて——。
ただ呆然と立ち尽くすばかりだった。

青空の下。風の音だけが響いている。
お互いに無言を貫いているのが耐えられなくて。
わたしは、震える声で言葉を必死に紡いだ。

『あっ…わたし、何か嫌われるようなことしたかな…?』

なるべく明るい声のトーンで言うと。
海里が慌てて否定する。

『違う!七夏は何もしてねー!』
『じゃあっ…どうして?』

駄目だ。聞いちゃいけない。
それ以上、踏みいるべきじゃない。頭ではそう分かっていても口が勝手に動く。

『わたしのことっ…好きじゃなくなった?』
『ッ…それ、は———』

口ごもる海里を見るのが辛くて。わたしは目をふせた。

『……ごめん、七夏』

そっか。
これが、 海里の今の気持ちなんだ。
受け入れなくちゃいけない。
そう思っていても。
気持ちの整理がつかなくって———。



『……ッ…』



わたしの瞳からは大粒の涙が次から次へと…こぼれ落ちるばかりだった。



『ごめんっ…』
『おいっ!七夏!』




泣きじゃくる顔を海里に見せることが辛くて。
わたしは、その場から逃げるように走り去った。

認めたくなかった。
海里に…他に好きな人ができたことを。
たしかに最近のわたしたちは一緒にいても喧嘩ばかりで、上手くいっているとはいえない感じだった。
別れてしまおうかって考えたりもした。でも、いざ言おうとすると言えない自分がいた。

その理由が、ずっと分からなくてモヤモヤしてた。
だけど、 今になって痛いほど分かった。





海里と別れたくない——。
そう想ったのは。


——わたしが、 海里のことを手放したくないほど…本気で好きだからなんだ。