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Re: 恋花火—ひと夏の恋— ( No.19 )
日時: 2016/12/23 22:36
名前: Aika (ID: MGNiK3vE)

Episode16:すれ違う恋模様。





———『俺、 お前が好きだから』


たしかに、そう聞こえた。
聞き間違いなんかじゃない。
頭のなかでは、そう分かっていても
なぜか、 素直に認められなくて…

「輝…あんまり冗談いうとマジで怒るよ」
「冗談じゃねーって言ってるだろ」

強い口調ではっきりとそう言う輝に。
わたしは何も言えなくなった。

力強い視線で見つめてくる輝が
いつもの輝とは違いすぎて。
わたしは、真っ直ぐに輝の顔を見ることができなかった。

夏の夜の冷たい風がわたしの髪を静かに揺らす。

しばらく、沈黙が続いて
不意に輝が口を開いた。

「まぁ…青葉が俺を何とも思ってないことは知ってる。それでも今日、言おうと思ってたんだ」
「……フラれるって分かってるのに告白したんだ」
「まぁな…他にいるんだろ?」

中学からの付きあいなだけに。
輝にはなんでもお見通しだ。

わたしは、輝の問いかけに何も言わずに
静かにうなずいた。

「やっぱりなー…まだ、好きなんだな」

優しい顔で
見つめてくる輝にわたしの胸は途端に苦しくなる。

「ごめん」

わたしは、ただ謝ることしかできなかった。

「謝るなよ。…余計にむなしくなるからさ」

輝のことは、嫌いじゃない。
むしろ、好きな方だ。
でも、この気持ちは恋愛とは少し違う気がする。
友達とか気を使わずに話せるそんな感情に近いやつだ。
あの人への想いとは違う———。

「あいつ以外を好きになろうとか思わねぇの?」
「何度も…そう思ったよ。でも、無理だった」

他の人を…何回も好きになろうとしたし、好きでもないやつと付き合ったりもした。
それでも、 ダメだった。
他の男の人といても、あいつの顔が頭に浮かんで離れない。

「叶わないってことは知ってる。この気持ちを伝えられないのだって分かってる。
それでも、 あたしはアイツしか見えないからごめん」

それだけ言うと。
輝は小さくため息をついて。

「はっきりと言うんだな。おめぇらしいけど」
「ごめん」

また誤ると。
輝はあたしの髪をくしゃっとして
大声で言った。

「だーかーらー…謝んなよ。俺がただ言いたかっただけだからさ」
「でもっ…結果的に輝を傷つけたし」
「いいよ、別に。今まで通り友達でいてくれれば。…それに」

続けて輝はにこっと笑いながら言う。

「一度、フラれたぐらいで諦める気はねぇからさ」
「なっ…それ、すごく困るんですけど」
「そういうわけだから、これからアタックするんで。じゃあなー」
「ちょっと!」

そう言いのこして、輝は帰っていった。

「ったく、言いたいことだけ言って帰っていきやがって」

人の気持ちも、知らないで。
男なんてみんな勝手だ。
人の気持ちばっかり振り回して。
かきみだして。

「…帰るか」

スマホで時間を確認すると
もう21時を過ぎていた。
あんまり帰りが遅いとお母さんとかうるさいしなー。

そんなことを考えながら歩いていると。

「あれ?…青葉?」

背中から声がして。
振り返るとそこにいたのは。



「…えっ!爽…なんでここに」



好きだけど、 絶対に叶わない。
あたしの恋する君がいた。