コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 恋花火—ひと夏の恋— ( No.2 )
- 日時: 2016/06/11 18:35
- 名前: Aika (ID: WRt4rHcu)
episode1:約束。
『空っ!!』
笑顔で、 わたしの名前を呼ぶ
少し低くて、 元気な声が好きだった。
ずっと、 傍にいられる。
そう思っていた。
だけど
現実はそんなわたし達を引き離すように———。
「俺…この夏が終わったら、引っ越すことになったんだ」
中2の…夏祭りの夜。大輪の花火が夜空に咲く中で。
浴衣姿の君は…顔をうつむいたまま
そっと、 そんなことを口にした。
わたしは…突然のことに
頭が真っ白になって。
何も言葉が出てこなくって。
「そう、 なんだ……」
そう一言。
小さな声で言って、 彼の顔を見ることができず
ただ… 花火だけを見つめていた。
「ごめん…ずっと傍にいるって。約束したのに」
涙混じりの声に。
わたしもつられて、 涙が零れ落ちそうになる。
泣いちゃ、 だめなのに。
だって…
一番辛いのは、 きっと。
———蛍なんだから。
「謝らないでよ…蛍が悪いわけじゃないんだから。…どこに引っ越すの??」
「……京都。父さんの仕事の都合で、さ…」
京都、 か。
東京と京都じゃ…きっと、もう二度と会えないんだろうなぁ…。
じゃあ、わたし達のこの関係も。
終わりって、ことなのかな。
そんなの…。
「空…大丈夫??」
「えっ…あっ…やだな…なんで涙なんか流してんだろう、わたし」
止めなくちゃって。
そう思っているのに。
涙はわたしの気持ちとは裏腹に
とめどなく零れ落ちて———。
止まらなかった。
その時だった。
温かいぬくもりが
わたしの全身をつつみこんだ。
「えっ…」
蛍の力強い腕が
わたしの体を抱きしめていて。
全身が心臓になったみたいに、わたしの鼓動は速くなった。
「空…約束してほしい」
耳元に、 そっと話しかける彼に。
わたしは、 そっと耳を傾ける。
「俺…何年先になるか分からないけど、絶対に東京に帰ってくる。だから…それまで待っててほしい」
その言葉が不思議とわたしの心にすっと入り込んできて。
悲しい気持ちが嘘みたいに吹き飛んだ。
「うん。…絶対、だよ??」
「ああ。…あと、これ…空にあげる」
そう言って、 彼が渡したのは。
可愛いハートのついたネックレス。
「えっ!??いいの??…こんな高そうなのもらっちゃっても…」
「当たり前じゃん。…空のために買ったんだから。…それに俺がそんな可愛いの持ってたらおかしいだろ??」
「……たしかに」
そう言って二人で大笑いした。
こんな風に二人で笑うこともできないのかって思うと
やっぱり寂しい気持ちになるけど。
永遠の別れじゃないから。
二人の気持ちはきっとつながっているって思えるから。
乗り越えられるって…そう思った。
ひとしきり大笑いした後。
わたしは蛍にネックレスを見せながら。
笑顔で言った。
「これっ…一生の宝物にする!!」
そう言うと、 蛍も笑顔で返す。
「大げさすぎ…」
それから
夏休みが終わると。
蛍は東京を出て、 京都に引っ越した。
部屋の中の風鈴の音を聞きながら。
携帯の待ち受けに映る
蛍と笑ってるわたしの写真を見つめながら。
そっと呟いた。
「きっと… また、 会えるよね??蛍」
だけど…
その思いは叶わないまま。
3年の月日が流れて。
「空ー!!期末テストどうだった??」
「無理無理。全然分からなかったよ」
「そう言っててー、どうせ良いんでしょ??」
「いや、そんな事ないってー」
わたしは。
高校2年生になった。